■ “成長塾”経営者に聞く - 株式会社イケガミスチール

岡山県総社市で鉄骨工事・上下水道工事、新築・増改築工事を行っている株式会社イケガミスチールは人事制度を導入して1年。経常利益4倍、新卒採用の成功という具体的な成果が現れ始めている状況について、代表取締役・池上雅己氏に詳しくお伺いした。
もくじ
1.イケガミスチールの概要
2.成長塾に参加した理由
3.人事制度導入の理由
4.成長塾で印象に残ったこと
5.導入後1年目の状況
6.初めての新卒採用に成功
7.経常利益が4倍に
8.人事制度を導入しようと考えている経営者へのアドバイス
9.ENTOENTO(多摩研)、成長塾への期待
― イケガミスチールについてご紹介ください。
イケガミスチールは岡山県総社市で耐震・免震に優れた重量鉄骨住宅のほか、各種リフォーム・水道工事などを行っています。
現在、イケガミスチールを中心としたISグループ5社で事業を展開しており、社員は総勢30名(2009年9月)です。創業は1947年、農機具メーカーとしてスタートしました。その後、数回の業態転換を行ってきました。
2008年からは工事・施工だけでなくISガレージ、ISボックスというオリジナル商品を開発し、「メーカー」としてスチール製品を販売しています。さらにグループでは、英会話教室、高齢者専用賃貸住宅のコンサルティングから施工・施工管理、戸建・賃貸のコンサルティングも行っています。

メーカーを目指すオリジナル商品の1つ「ISガレージ」
― 成長塾に参加された理由をお聞かせください。
参加の理由は、まさしく「人」。
人をどうやって育てるか、どうやって組織として成長できるのか、長年の迷いがありました。
社員から見れば、何のためにこの会社に勤めているのか、自分が一所懸命にがんばったらどうなるのかが、きっとわかっていなかったと思います。
社員が成長していける仕組みを整備し、目に見えるようにしたかったのです。
― 人事上、どのような問題点があったのですか。
人事制度を導入する前にも、職能給制度は導入しており、職能給表と号俸表は用意してありました。しかし、現実にはあってなかったようなものです。
中途採用を行うと、前職での給料を聞き、その金額に見合うように何等級何号俸と決めていました。それでは本来の職能給制度の意味がないことはわかっていましたが、現実に職能給を決めるための仕組みがありませんでした。
就業規則もつくってありましたが、飾ってあるだけ。そこには魂も何も入ってはいませでした。
そんな状況ですから、社員の定着率は悪かった。1年に3人採用すれば3人とも辞めてしまう。私が先代から引き継いで23年になりますが、その当時の人は一人もおらず、長い人で勤続15年位です。
その理由は間違いなく私がワンマンだったから。
人を育てる、という気持ちはありませんでした。
正直言って「社員は稼ぐために存在している」と思っていました。

ワンマンだった時代を振り返り、
「人事制度によって自身が変わった」
と語る池上社長
― 成長塾に参加し人事制度の導入を決められたポイントは何でしょうか。
本を読んだり、お話を聞いて、この人事制度ならやっていけるのではないかと感じたのは、「社長が考えた人事制度が一番」ということを成長塾修了企業の経営者から聞いたときです。
今までいろいろと勉強したり、経営者の話を聞いたりもしましたが、どれも絵に描いた餅だなと思っていただけに、目から鱗でした。
― 人事制度を導入するに当たって、一番大変だったことをお教えください。
成長シートの内容をどうするかは苦労しました。
成長塾に一緒に参加させていただいた幹部は数値責任を持っていますが、一般の社員は持っていません。社員にとって売上はプレッシャーとイコール。 内容によっては、単に社員にプレッシャーをかけるだけになりかねません。
だから売上を全面に出さないように、どうやれば必然的に売上が上がっていくのか、を成長シートに落とし込むことが大変でした。

― 成長塾で印象に残ったことは何かありますか。
私は62期に参加したのですが、最初に「辞めさせたい社員はいますか?」と聞かれましたので、即座に「います!!」と答えました。
成長塾から戻ったらその足でクビにしようと決めていた社員が本当にいたのです。
ところが講師の松本さんから「その人を留まらせて、その人を成長させられたら、人事制度は成功です」とアドバイスされました。
会社に戻ってその社員を呼び出しました。やはり雰囲気でわかるのでしょう。その社員も辞めるつもりでいました。
しかしその社員をクビにするのではなく、引き留めました。もちろん今でもがんばって仕事をしていますし、成長したと言ってもいいでしょうね。
― 人事制度の導入はどの段階で発表されたのですか。
私は成長塾に通い始めてから、朝礼などで「こんなことをしているよ、こんな制度を導入するよ」と話していました。ですから、社員にしてみたら「社長はまた何かやっている」位の気持ちで最初は見ていたと思います。
― 実際に仮運用として導入されて1年が経ちますが、現在はどのような状況ですか。
1年間やってみましたが、100%うまくいってはいません。ただし、良かったことはたくさんあります。その1つが、出来ないということを再認識出来たことです。
人事制度は、人がつくったものを真似したものでも、コンサルタントにつくってもらったものでもなく、自分でつくったものです。
ですから、これ以上の人事制度はなく、これがうまくいかなかったら何をやってもうまくいかないと考えています。
だから簡単にうまくいかないことがわかって良かったのです。
― 運用されてみて、どのような問題点が出て来たのでしょうか。
成長シートを使って、上司は部下を成長させる、社員は自ら成長していくものなのですが、まだどこかに人が人を評価するという思いが残っているようです。
3カ月に一度、人事制度の日として評価をフィードバックする日を決めたのですが、実際にきちんと出来たのは、1年間で2回でした。後の2回は、目先の仕事にかこつけて参加しない幹部や社員がいて、出来ませんでした。
― 人事制度を導入されて、改善された点はありますか。
一つには定着率が良くなりました。この1年間で辞めた社員は1名だけです。それも人事制度と成長シートを社内で正式に発表した後、「こんなことはできない」と言って辞めていったものが1名いるだけです。
その社員とは、私の理念が合わなかったわけですから、致し方ないことと考えています。
また、初めて新卒採用を行いましたが、応募者が50名以上おり、大変うまくいきました。
― 新卒採用に成功された理由をどうお考えですか。
社員を成長させる仕組みである人事制度の話をきちんとできる会社がほとんどない中で、自然と差別化が出来たからです。
集まった学生に「あなたの給料はどうやって決まるか知っていますか」と聞いたところ、誰も知りませんでしたし、そんな話は聞いたことすらないと言うことでした。
私が人事制度をきちんと説明し、入社後、どのような業務を行い、どう成長すれば給料が上がるのか、成長するための指針として成長シートがあることをお話ししたら、学生たちの目の色が変わりましたね。
営業と技術各1名、計2名の内定を出しました。
― 売上や経常利益と言った面では、人事制度の効果はいかがですか。
正直、売上は少し下がりました。それは経済動向に影響された部分もあると分析しています。
しかし、経常利益は 2,000万円から8,000万円と4倍になりました。前年度の余波が貢献している部分もありますが、社員の意識が少しずつ変わってきた、いい効果が出ているのではないでしょうか。
制度そのものはまだ定着していませんが、人事制度があると言うことで、社員もがんばって仕事をすれば、どう評価されるのかが見えるようになり、少しずつ意欲が向上してきた現れでしょう。
実は一番肝心なのは、私自身、社長が変わったと言うことです。
社員を育てていこう、最終的には人だ、と昔から思っていましたが、出来ていなかった。
表面的にはわかったような顔をしながら、つい利益を追求して、人は道具だと考えている私がいました。
それが人事制度を導入することで、具体的な成長シートという形になり、社員にも私にも見えるようになりました。
― 2年目に入る人事制度をどのように進めていこうとお考えですか。
1年目は仮運用ということもありますが、20%程度しか出来ていないと思います。ちょっと知らしめたという程度でしょう。
私は3年かけて、60%から70%浸透させることが出来ればいいと考えています。
1年経って振り返ってみれば、最初の成長シートは高級すぎました(笑)。盛り込みすぎで、欲張っていたと反省しました。
欲張りすぎると、社員は何をしていいかわかりませんからね。
2年目に向けては、これだけやってくれればいい、というものに修正しました。一つのことができるようになれば、他のこともできるようになります。
― 池上社長の今後の展開をお教えください。
最初にもお話ししたように、メーカーへ成長していきたいと考えています。
というのも仕事をつくっていくのは、社長の仕事です。今後は施工だけでなく、コンサルティングとメーカーの二本立てに進んでいければと思っています。
人事制度を導入した効果を活かしながら、最終的にはグループを30社程度にして、成長した社員にトップを任せていきたいですね。
― 人事制度の導入をお考えの経営者の方にアドバイスをお願いします。
人に対する悩みは経営者に共通のものだと思います。何とかしたいと、皆お考えでしようが、ほとんどの方は考えるだけで行動に移していません。
私も人事制度について聞かれれば、いろいろとアドバイスはしますが、最終的にはご本人が「やる」と決めて行動することだと思います。
成長塾に「行きたい」ではなく「行きます」に変える。
それがまず最初の一歩になると思います。
― ENTOENTO(多摩研)、成長塾に対する期待をお聞かせください。
人事制度が必要な中小企業は本当にたくさんあると思います。人事制度がなければ、社員は何のために働いているのか、と聞けば、お金をもらって家族を養うという答えだけになってしまいます。
それが人事制度により、自らの成長が可視化されれば、働く目的もわかり、その報酬として自分の給料があり、社会にも貢献できることが見えるでしょう。すると楽しく働けるし、家族とも楽しく過ごせる。
そんな会社を1社でも増やしていくために、今後ともがんばっていただきたいですね。
株式会社イケガミスチール様、本日はお忙しい中、
貴重なお話をありがとうございました。
社員を成長させ、社内を活気づけたい方はこちら → 成長塾について
※ 株式会社イケガミスチールのWebサイト
※ 取材日時 2009年9月