人事制度とは社員を成長させる仕組みです。しかし、多くの企業では人事制度の目的を誤解して、社員を評価する目的、賃金を決める目的で導入しています。
断言できるのは、人を成長させる仕組みとして人事制度をつくり、運用しない限り、その成功はないということです。
「この基準にたらし合わせると、あなたは○○点です」
誰でも、評価されるということは嫌なものです。そのため、社員から受け入れられることはありません。
「この基準に照らし合わせると、あなたの賃金は○○円です」
自分の働きや存在を金額に換算されるような気持ちになります。やはり、社員から受け入れられることはありません。
「あなたは重要業務の○○が3点まで成長しています。基本的なやり方はできているので、社内にあるもっと優れたやり方を学んでいきましょう。それから知識・技術ですが……」
何がどこまで成長しているのか。さらに成長するためには何が必要なのか。それを社員に伝えることができます。社員にとってプラスになるものなので、受け入れてもらうことができます。
人事制度は大きく分けて4つの制度から成り立っています。

○ 成長支援制度(人事制度の要)
○ ステップアップ制度
○ 教育制度
○ 賃金制度
社員がどこまで成長したのかを確認し、次の成長に向けて支援し、教育し、その成長のそれぞれの段階として賃金がどう決まるのかを明らかにするのが、本当の人事制度です。
多くの経営者が“人事制度”という言葉を意識するようになるのは、社員数が10人を超えたあたりです。スパンオブコントロールというものがあります。経営者が1人で指導できるのは10人が限界です。ですから10人を超えると管理者を任命するのですが、「どうもうまくいかない」と感じ、「何がしかの仕組みがないからだめなのではないか」と考え、人事制度を意識するようになるのです。
このときに多くの人が犯してしまう間違いがあります。
これは大きな誤解です。人事制度がない企業は1社もありません。人事制度がないというのは、こういうことです。
・社員の成長を確認していない
・社員を指導していない
・賃金をくじなどで決めている
これに当てはまった方はいましたか。いないはずです。経営者は、
○社員の成長を確認し、
○成長に基づいて指導し、
○成長に基づいて賃金を決めている
のです。ただ、それが目に見える形になっていないため、人事制度だと気づかないだけなのです。
つまり、人事制度はすでに存在しているのです。ところが人事制度があると気づかない方は、間違った方向に進んでしまいます。
すでに人事制度があるにもかかわらず、外部に求めてしまうのです。十人十色と言いますが、
○社員どのように成長してもらいたいか
○その成長に合わせて社員にどのように処遇したいか
は経営者によって考えが違います。まったく同じように考える経営者などいません。つまり、人事制度について「合う・合わない」を考えることが、そもそもおかしいことなのです。
ではなぜ10人を超えてくると、人事制度が必要ではないかと思うようなことが起きるのでしょうか。
理由は簡単です。経営者の頭の中が目に見えないからです。見えないことは不安です。不安が不満をつくってしまうのです。
10人を超えるまでは、経営者が1人で社員を指導し、評価し、処遇を決めていました。経営者が何をどのように考えて評価し、処遇を決めているのか、社員もお互いをよく見て知っているので、全員がなんとなくわかっていました。
ところが人数が増えてくると、経営者1人では社員を見ることができません。社員同士もわからなくなってきます。加えて管理者が任命されます。
管理者は経営者ではありません。経営者の頭の中が見えない管理者は、「経営者ならこうするだろう」という自分の考えに基づいて社員を指導し、評価します。しかしそれは経営者と同じ評価にはなりません。今まで経営者の考えについてきた社員は、今までと違う評価をされることにだんだん不安を感じます。
さらに、経営者は管理者が行った指導や評価を見ても納得できません。ですから管理者に黙って社員の評価を修正してしまいます。
それは実は正しいことだったのです。なぜなら、経営者が納得できない評価によって処遇を決めることはできないからです。しかし社員はますます不安になります。
社員を好き嫌いで評価している経営者はいませんし、同じく好き嫌いで処遇を決めている経営者もいません。良かれと思ってやったこと。しかし、それが社員からは見えないために、不安になり、不満をつくってしまうのです。
ですから、不満の大半は誤解です。たとえば、
・評価に納得できない
この不満はよく耳にすると思います。しかし、自分の評価を知っている社員は滅多にいません。なぜなら、社員に評価を伝えている企業はほとんどないからです。
ではなぜ評価に関する不満が出てくるのでしょう。
社員の不平・不満が発生する時期というのは決まっていないでしょうか。だいたいが昇給や賞与の支給後ではありませんか?
評価を伝えられていない社員は、支給された昇給や賞与を過去の自分と比べ、他人と比べ、自分がどう評価されたのかということを推測しているのです。
・去年より減った→評価が下がった
・A社員より少なかった→A社員よりも低く評価された
昇給・賞与は評価によってのみ、決まるものではありません。会社の業績が大きく関わってきます。評価は高かったが賃金は下がった、ということはよくあることです。また、年齢や組織的な成長(等級)によって、違いもあります。
しかし、どのように賃金が決まっているのかわからないため、「自分は正しく評価されていない」という不満になってしまうのです。
つまり、経営者の頭の中が見えるようになれば、誤解は解け、不安はなくなり、不満が生まれることはなくなるのです。
ここで「正しい人事制度はないか」と探してしまうと、企業の存続を左右するほどの大問題を引き起こしてしまいます。経営者の考えに合う正しい人事制度など、自社以外を探しても見つかりません。経営者の考えに合わないばかりか、今まで経営者に賛同してついてきた社員にとっては、経営者が変わってしまったも同然に感じるのです。
ですから、経営者の考えていることを可視化し、仕組みとしてまとめる。これが唯一、人事制度をつくるときの正しい方法なのです。
経営者の頭の中を可視化して人事制度をつくられると決意された方、「そんなことで本当に運用できる人事制度がつくれるのだろうか」という疑問を持たれた方、みなさんに知っていただきたいことがあります。人事制度は難しくつくってはいけないということ、そして人事制度の本来の目的です。
「事業は人なり」と考える、社員を大切にする経営者の方は、ぜひ『成果主義人事制度をつくる』を読んで、正しい人事制度について知ってください。正しい人事制度づくりのノウハウが書かれています。
追伸 この本は、世間一般に考えられている「成果主義」の本ではありません。「成果」を上げた人だけ評価し、 処遇することをすすめる気はありません。社員に「成果」を上げさせるための人事制度であり、成果の上があない社員を切り捨てるために人事制度があるのではないのです。
読了後には、御社の人事制度のフレームワークが出来上がっていることでしょう。
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