ブログ記事一覧

ダントツ日本一の成長制度支援数
過去20年間で支援実績1,411
お問い合わせ資料請求

びわこホーム株式会社様(建築不動産業 滋賀県)

2018-06-25 [記事URL]

歩合給を廃止。でも業績は伸びています。本気で会社を変えるなら、成長塾の受講をおすすめします。

biwakohome-2.jpgびわこホームは、2009年9月、歩合給制を廃止し、新しい人事制度を導入しました。テレビのビジネス情報番組や、ビジネス誌などマスコミでも話題となった同社の新人事制度について、代表取締役・上田裕康氏と、常務取締役・高木光江氏に伺いました。

contents.gif

1.びわこホーム株式会社の概要
2.前向きに仕事に取り組む社員の姿勢が、競争優位性に
3.びわこホームの社員が一所懸命働く理由
4.歩合給制を廃止し、成長支援シートを導入
5.ENTOENTOスタッフと一緒に成長支援シートを作っていった
6.社員が成長を実感できるツールじゃないと導入した意味がない
7.トップ営業マン4人が退職。しかしリーマンショック後も業績を維持
8.個人の成果から会社の成果へと価値基準がシフト。社員がやめなくなった
9.これから人事制度を作っていきたい経営者へのアドバイス
10.ENTOENTO成長塾への今後の期待

1.びわこホーム株式会社の概要

総合建築・不動産業を営むびわこホームは、滋賀県の中でも湖東・湖南の地域に密着した事業展開を特徴としている。同社が商圏とする地域において、土地の売り物件占有率は88%、新築住宅の着工棟数でもシェア10%と、いずれもトップ。特に新築着工棟数では8年連続でトップシェアを維持している。 1990年創業。社員数35名(2011年10月現在)。

2.前向きに仕事に取り組む社員の姿勢が、競争優位性に

― 御社の事業の特徴を教えてください。

びわこホーム本社入り口の看板びわこホームの事業の特長は、地域密着力と徹底したアフターサービスです。
弊社は創業以来、地域密着型サービスで、競争優位性を確立して来ました。そして、最近はOB顧客数が2千数百世帯という数字に達し、広告費をかけなくても口コミで集客できる環境が整ったことから、OB顧客に対するアフターサービスに注力するようになりました。

その効果は、新築着工棟数8年連続トップシェアという成果に現れています。さらに、未曽有の不景気と言われたリーマンショック以降も業績を落とすことなく、2011年8月末の決算では年間売上約16億円に達しました。昨対比14%の増収です。経常利益は1億3千万円。経常利益率は8%強と、建築業界の中では高水準を維持しています。

― そのような圧倒的な競争優位性を生み出す地域密着力と徹底したアフターサービスを実現している要因は何ですか。

それは、弊社の社員全員が、会社の発展と自己の成長を目指して、前向きな姿勢で仕事に取り組んでいるからです。

例えば、他社の営業マンが10件回るところを、弊社の営業マンはその2倍、3倍のお客様を訪問します。店舗ではお客様ご来店時、その場にいるスタッフ全員が作業を止めて出迎え、お帰りの際にはお客様の姿が見えなくなるまでお見送りします。また、お客様からのご信頼をいただけるよう、一人ひとり自分の目標を立ててレベルアップを図っています。やっていること自体はシンプルですが、弊社の場合、やるべきことが明確なため、徹底してそのやるべきことに取り組めるのです。それが競争力に繋がっています。
それが、成長支援シートを導入して更に強みになりました。

3.びわこホームの社員が一所懸命働く理由

― 成長支援シートとは何ですか。

これだけあれば、社員を評価すべき基準というのは他に考える必要がありません。成長支援シートは、文字通り、社員の成長を支援し自立型社員を育成するためのツールです。特別な能力を持った一部の社員だけではなく、普通の社員が将来のビジョンやキャリアプランを考えながら着実に成長していける会社を目指し、株式会社ENTOENTO(エントエント)の成長塾に通いながら作成しました。

成長支援シートでは、成果、業務プロセス、習得スキル、人間性という、社員の成長に関係する全ての要素が網羅されています。社員にどう育ってもらいたいのか、何をしてもらいたいのか、これ以外に考えるべきことは何もありません。このシートに基づいて、役職、成長等級、基本給、賞与・昇給などを決めることが可能です。

― 成長支援シートを導入すると、やるべきことが明確になるのでしょうか。

それは成長支援シートの中に、社員に対して会社が期待する成果、それを達成するための業務プロセス、またはその業務を遂行する上で必要なスキルや知識、さらに心がけるべき勤務態度が、全て示され、それに対する評価基準が明確に示されているからです。それにより、新卒の新入社員を含め全員が同じ方向に向かって努力して、各自が大きな成果を出すことが出来ます。

成長支援シートでは、縦軸に評価要素が並びます。弊社の場合、所属部署・成長階層ごとに異なる成長支援シートを作成していますが、それぞれ15項目ぐらいの評価要素を設定しています。横軸には、項目ごとの評価基準を5段階で示し、それぞれ点数化しています。評価要素ごとの評価点数を合計すると100点満点となります。日常業務の中で、社員が自分で各評価要素に対する評価点数を記録し、それを元にマネージャーが上司評価します。

ここで設定された評価要素と評価基準によって、各自、やらなければならないことが可視化されます。これらは、これまでの社員の成功体験を基に、成果が出る仕組みとして落とし込んだものなので、この通りにやれば全員同じように成果が上がります。最終的な評価は全上司が集まる成長支援会議で決定しますので、上司によって指示や評価基準が異なるということも起こりえません。

成長シート
縦軸に評価要素、横軸に5段階の評価基準が取ってあり、最後に社員が自ら評価点数を記入する。

4.歩合給制を廃止し、成長支援シートを導入

― 成長支援シートを導入した経緯を教えてください。

弊社が成長支援シートを導入した時期は、2009年9月です。2008年10月から成長塾に通い、半年かけて人事制度を構築し、5か月間試験的に運用した後、本格導入しました。
導入理由は、永続する会社を作りたかったからです。

導入以前は、歩合給という給与制度を持っていました。不動産業界では当たり前の制度なのですが、この制度をずっと変えたいと思っていました。
売ったら売った分だけ歩合がもらえる。売れなければもらえない。確かに、表面上はとても社員の納得を得やすい制度です。稼ぎたいという意欲を持った社員が、徹夜も惜しまずに仕事をし、ときには年収1,500万円となる社員も出ました。

しかし、無茶な仕事の仕方ができるのも35歳くらいまでです。そこからだんだん年収が下がっていきます。子どもが受験をする、塾に通う、高校や大学に進学するという一番お金のかかる時期に、収入が下がるのです。そうして稼げなくなると、社員は辞めていきます。

社員が幸せになる会社をつくるというずっと抱いていた理念に沿わない。社員を幸せにするために歩合給をなくしたいと、ずっと悩んでいました。
また歩合給制は、個人プレーに繋がりやすく、不公平感を生み出していました。

販売成績の良い営業社員は高い給料を取れますが、成績が伸びない営業社員や営業以外の間接部門の社員は給料が増えません。入社たった3か月で辞める社員もザラでした。社員の名前を覚える間もなく、社員が入れ替わっていたようなときもあります。

さらに、マネージャー職には役職手当が付きますが、前線に立つ営業マンは新築住宅を一棟売るだけで役職手当とは比較にならないほどの歩合給を得ることが出来るので、前線から離れたマネージャー職には誰もなりたがりません。引き受けたとしても嫌々やっている状態ですから、部下が育つはずがありません。いつの間にか、社内はギスギスした雰囲気になって、社員が定着しにくい会社になっていました。

さらに憂慮すべきこととして、顧客が欲しがっている商品ではなく、自分の給料のために顧客のニーズとは関係ない、価格が高い方の商品を売る社員が現れました。
我々は強い危機感を持ちました。目先の2~3年間、人より沢山稼げたら良いという社員しか残らない会社では永続することは出来ません。社員を幸せにすることもできません。会社を永続して、社員全員に長く働いてもらって、幸せな人生を送って欲しい。そのためには歩合給制を廃止しなければならない、と気が付いたのです。

― 歩合給制の廃止にあたって、心配されたことはありましたか。

歩合給を廃止すれば、営業社員のモチベーションが下がり、売上を稼いでいる上位の何名かのトップ営業マンが退職する可能性がありました。それによって、業績を維持・発展させることが出来なくなる心配はありました。また、歩合給制に代わる給与制度または人事制度が必要ですが、それがどのような制度かイメージ出来ませんでした。

そのような葛藤が続いていた時、経営者仲間から「人事制度に特化したコンサルティング会社がある」と紹介されたのがENTOENTOです。その話を聞いて可能性を感じた我々は、歩合給制の廃止を決めました。そして、それに代わる人事制度を構築するために、ENTOENTOの成長塾に参加しました。

5.ENTOENTOスタッフと一緒に成長支援シートを作っていった

― 成長塾に参加する前に、他の人事制度コンサルタント会社などとの比較はされましたか。

社員と社員の家族を守りたいという社長の想いが伝わってきた。いえ、他に選択肢はありませんでした。
成長塾で教える人事制度の考え方は、いわゆる成果主義とは対極にあります。そのような考え方を仕組みとして体系化しているコンサルタントは他に知りません。新しい人事制度を構築する決意で、迷わず参加しました。
実際に参加してみると、第一回目の受講の場で松本先生から「いわゆる成果主義や歩合給制は良くない」という話を聞いて我々が目指す方向性に確信が持てました。

― 成長塾に通いながら成長支援シートを作成していく過程はどのようなものでしたか。

作業は大変でしたが、松本先生の指導と、ENTOENTOスタッフのサポートがあったので、最後まで投げ出さずに作成することが出来ました。
成長支援シートの作成で行き詰ると、ENTOENTOに電話しました。成長支援シートの内容からパソコンの操作に至るまで、どんな時も一所懸命、丁寧に教えていただきました。こちらも必至でしたが、ENTOENTOはその必死さに応えてくれました。一緒に作り上げた、という感覚です。

成長支援シートを含む人事制度をゼロから作っていく過程は、大変なパワーが必要です。全6回講座きちんと通って、一つ一つのカリキュラムを積み重ねなければ作れません。研修会場で講義を受けて、課題を社内に持ち帰って作り上げていくのですが、事例はあっても、丸写しできるものではありません。経営者の想いが反映したものでなければ意味はないし、かといって経営者一人の想いだけで作れるものではない。3人の幹部が会議室に閉じこもって、議論を重ねました。その中で苦労したのは3人の意見を一致させることです。なかなか一致せず、数えきれないほど作り直す作業を繰り返しました。

― 半年かけて人事制度、そして成長支援制度が完成した時はどのようなお気持ちでしたか。

成長塾に半年間通って人事制度、成長支援シートを作成しましたが、それで完成ではありません。それは成長塾の中でも、言われたことです。実際に導入して見ると、変更すべき箇所が出てきます。実際に社員がシートで自己評価しようとすると、「わかりにくい」「評価しにくい」ということが出てきました。

6.社員が成長を実感できるツールじゃないと導入した意味がない

― 現在の成長支援シートにたどり着いた経緯をお聞かせください。

最初に作った成長支援シートは部署ごとに作成してあり、評価要素は23~25項目ありました。しかし、実際に社員に評価させてみると、部署ごとという分類では大雑把すぎるということが分ってきました。なぜなら、同じ部署に所属していても、1年目の社員と2~3年目の社員では、会社が期待する成果や業務内容が違うからです。1年目とベテラン社員ではなおさらです。つまり成長支援シートに書いてある評価要素全てが、その部署全員に当てはまるわけではありません。

普段自分がやっていない業務で評価点をつけることは不可能です。無理に評価しようとするとその評価要素の評価は5段階の「1点」となってしまいます。また、評価基準も、出来るだけ明確にランク付けしたつもりでしたが、あいまいな基準が残っていました。

これでは、社員自ら評価する成長支援シートが、社員のストレスになってしまいます。
成長塾の教えでは、人事制度は、社員を評価するための制度ではなく、社員の成長を支援するための制度です。その教えに従えば、成長支援シートは、社員たちが前向きに取り組める内容でなければいけません。自分で評価点をつけることで、社員自らが自分の成長を実感出来ることが重要なのです。問題があるまま1年間過ぎたら、社員が自分の成長を確認するという本来の機能が果たせないため、やりにくい要素があれば修正しました。

弊社では毎月マネージャーと社員の面談を行い、成長支援シートをもとに月々の成果を確認します。その質疑応答の中で成長支援シートの問題を抽出して報告してもらいました。そこで気が付いたのは、極端に言えば社員一人ひとりに応じた成長支援シートが必要だということです。実際には、35人の社員ごとの35種類ありませんが、部署と成長階層によって細分化して作った結果、現在の20数種類になりました。

7.トップ営業マン4人が退職。しかしリーマンショック後も業績を維持

― 成長塾に通い始めてから本格導入までの約1年間、歩合給をやめるという方針に対して、社内の反応はいかがでしたか。

我々が危惧していた通り、トップ営業マン達からは反発がありました。また、他の社員たちからも、モチベーションが下がった営業社員がやめた場合の会社の経営を心配する声がありました。
しかし、我々としては、この制度改革をやりきらない限り会社の永続はない、社員を幸せにできないという信念があったので、1年かけて説得する覚悟を決めました。

「子供が中学校、高校と一番金が要る時に、売れへんかったらどうしようと、そんな怖い会社あかんやろう」と説得をしましたが、結局、営業部長を含めた営業社員4人が退職しました。

― それによって、どのような影響があったのでしょうか。

トップ営業マンの4人がやめたことは残念なことです。しかし、それで業績が落ちることはありませんでした。リーマンショックによる不景気時も業績を維持し、昨期は前年比約14%の増収となりました。
導入までの1年間で、全社員と対話を続け、歩合給制を廃止することの目的や意義は、残った社員達の間に浸透しており、成長支援シート導入効果はすぐに現れたのです。

8.個人の成果から会社の成果へと価値基準がシフト。社員がやめなくなった

― この成長支援シートを活用した新人事制度導入によって、会社はどのように変化しましたか。

びわこホームの新卒採用ページ。成長支援シートによって、新卒社員も活躍できる環境が実現している。最も重要な変化は、個人の成果から会社全体の成果へと価値基準がシフトし、理念が統一出来たことです。個人プレーに走る社員がいなくなり、チームワークが形成され、社内の雰囲気が良くなりました。そして、離職率が低下しました。

弊社では、賞与の原資を、経常利益の一定割合と決めています。そして各自の評価点数に従って、その原資を全社員に分配します。個人や部門のみではなく、びわこホーム全体で目標を達成しなければいけないという意識を全員が持ち、ノウハウを共有するようになりました。

また、社員が自分で目標を立てて動くことが出来るようになりました。成果を上げるため、また自分が成長するためにすべきことが明確になった分、手持ち無沙汰な無駄な時間がなくなりました。それは同時に、マネージャーの業務も楽にする効果もありました。管理するポイントが絞れるようになり、余計なことを考える必要がなくなったからです。
さらに、 成長支援シートの導入によって、社員の人生設計もしやすくなりました。成長支援シートに基づいた長期計画で、5年後、10年後のキャリアパスが見えるからです。

― 人事制度に関連して、今後はどのようなビジョンをお持ちですか。

成長支援シートは本来、社員の成長を支援するためのツールです。今後、2年、3年、5年と、びわこホームというグラウンドで仕事をすることで、各社員が成長し、夢を実現し、幸せに一歩ずつ近づいていくということが、経営者としてのミッションだと考えています。

仮に22~23歳で入社した社員が、数年後、上場企業に就職した同級生と自分を比較した時に、自分の方が成長できている、給料も多い、といった実感が持てれば、会社に対する誇りを持てるでしょう。そんな風に社員全員が成長し、幸せを実現することが出来た、そんな言葉を社員自身から聞けるようになれたら嬉しいですね。

9.今後人事制度を作っていきたい経営者に対するアドバイス

― 今後、人事制度を構築しようとしている企業へのアドバイスをお願いいたします。

本気で実践するつもりなら、成長塾に行くのが一番です。
よく他の経営者が視察に来られて話を聞いて行かれるのですが、我々はそのプロではないので自分達が体験した以上の話は出来ません。実際に、そのようにアドバイスさせていただいた中から、受講された方も数名いらっしゃいます。
成長塾には、同じ問題意識を持った経営者が集まって来ます。そこで問題意識を共有して、切磋琢磨したり、情報交換したり、そういった体験が出来ることも貴重です。

また、年に一回、成長塾の研修を修了した経営者が集まる全国大会があります。同じ中小企業の経営者ばかりが集まり、成功事例や苦労された事例などを発表する大会です。共感出来ることや勉強になることが多い貴重な機会です。
こういったことも含め、人事制度や社員の成長に関して悩んでいる経営者の方は、ぜひ成長塾に参加されることをお勧めします。

10.ENTOENTO成長塾への今後の期待

― ENTOENTOまたは成長塾への今後の期待をお話しください。

成長塾を受講し、成長支援シートを作成した後も、全国大会に参加する他、メールやニュースレターを送っていただくなど、弊社とENTOENTOとのお付き合いは続いています。
今後の日本では企業における”人”の問題は、成長支援に留まらず、様々なリスクが発生してくることが予想されます。そのリスクに備えるためにも松本先生からヒントをいただいて、しっかり対応していきたいと考えています。

びわこホーム様

びわこホーム株式会社様、本日はお忙しい中、貴重なお話をありがとうございました。


びわこホーム株式会社様のホームページ
※ 取材日時 2011年10月


株式会社群協製作所様(製造業 群馬県)

2018-06-25 [記事URL]

社員が守るべきことを守れる会社にしたい。それがきっかけでした。組織風土が良くなったことで、今期業績は昨対で15~20%アップ間違いないでしょう。

株式会社群協製作所レーザーノズルとブラックレンズの販売では業界で有名な群馬県の株式会社群協製作所は、町工場ならではの古い慣習を見直したところ、社員の勤務態度が改善し、その上業績がアップしている。
代表取締役の遠山 昇氏に詳しいお話をお聞きした。

contents.gif

1.群協製作所の概要
2.成果を上げるよりもすごい技術を身につけるよりも勤務態度を守れる社員になってほしい
3.年功序列の評価は矛盾だらけ
4.初めて成長制度を導入するにあたっての社内の反応
5.群協製作所の成長制度とは
6.成長塾の成長制度の導入効果
7.相手が生身の人間だから、成長制度は真剣にやると面白い
8.成長制度を導入しようと考える経営者へのアドバイス
9.今後の期待

1.群協製作所の概要

― 群協製作所についてご紹介ください。

群協製作所の製品群協製作所(以下群協)は、群馬県で、銅管継手、レーザーノズルやブラックレンズなどの消耗品の販売、業務用粉塵フィルター洗浄の環境ビジネスと3本柱で事業展開しています。

従業員は営業部と製造部と合わせて40名です。

2.成果を上げるよりもすごい技術を身につけるよりも勤務態度を守れる社員になってほしい

― 群協製作所が、成長制度を導入するまでの経緯をお聞かせください。

勤務態度が良くない社員のいない会社にしようと思ったのがきっかけです。
勤務態度がお世辞にも良いとは言えない社員がいました。本人はほとんど自覚がなかったと思います。
私用メール、携帯電話で話をする、ガムを噛む、くわえタバコ、口笛を吹くなんていうのは日常茶飯事。社員同士のケンカもあれば、下着姿で仕事をする者もいました。工場に禁止事項の張り紙をしても、見る者はなく、当時は効果がありませんでした。

他の会社の見本になるようなすばらしい会社にしようとは高望みしませんが、社員が守るべきことを守れる会社にできないかと思っていました。

― そのような職場環境がつくられた原因は、どこにありましたか。

町工場には共通することですが、義理人情や年功序列での評価や給料を決めるという慣習があったことです。

「職人だからいいものを作れば、何をやってもいい」というような暗黙のルールがありました。

3.年功序列の評価は矛盾だらけ

― 職場の環境を改善するためには、具体的に、どのような仕組みが必要だと考えましたか。

まずは古い町工場の慣習を変える必要があると思いました。年功序列の給料は、公務員ならいいかもしれませんが町工場では通用しません。勤続給、年齢給の割合が高いようでは評価と矛盾していて正しく給料が決められないと思いました。

― どのような矛盾点があったのですか。

たとえば、若い上司の給料よりも年上の部下が高い、という給料の逆転現象も一部にありました。若い社員は、コンピューターつきの操作が難しい機械もすぐ覚えます。しかし、古参の社員は新しい機械が扱えなくても給料は下がることがないので、新しい技術を覚えようとしません。こういったことは製造業では致命傷になります。世間の技術革新に会社組織が追いついていけなければ、企業間の厳しい生存競争に生き残ることはできません。

4.初めて成長制度を導入するにあたっての社内の反応

― 初めて成長制度を導入するにあたって群協製作所の社内の反応はいかがでしたか。

社員から猛反対にあいました。先代の父にも反対されました。
成長制度をつくり評価を見直したところ、能力に対して給料があわず、減給の対象となる社員が数名でたからです。
成長塾ではこの減給相当額のことを調整給と言います。

成長塾では、調整給の見直しまで半年以上チャレンジ期間をおくよう説明されます。しかし、1人の社員については幹部で、もっとも勤務態度が悪かったので厳しく指導しました。どうしても良くなって欲しかったからです。それ以外の調整給の発生した3人の社員も伝えたところ、なかなか分かってもらえませんでした。

彼らの上司も呼んで一緒に話し合いました。彼らは「この成長制度はすばらしい。技術力が上がるに従って給料が上がるのは、若い人やヤル気のある人にはいいだろう」と分かってくれますが、ただ自分の給料が下がることは納得してくれませんでした。私は「評価=給料」、「給料=評価」と1時間半ほど説明しましたが、時間切れで納得してもらえませんでした。

― その後、どのように納得してもらったのですか。

厳しく指導した1人の幹部は辞めてしまいました。彼は芸術的な技術を持つ天才肌の職人でした。なぜそれほど高い技術力を持つ職人の評価が低いのかというと、一般職層の成長シートの全体の4割が勤務態度の評価にウェートをおいているからです。

天才肌の職人は、勤務態度がとても悪かったのですが、技術を持っているために、今まで誰も彼を指導することができなかったのです。彼はこの処遇に対して非常に怒りました。しかし彼は「勤務態度を改善することができない」と辞めてしまいました。

― 天才肌の職人が辞めてしまって、業務に影響はありませんでしたか。

正直、「辞める」と言われて困るというのはありました。そんな時、松本先生から2・6・2の組織原則を教えていただきました。2・6・2の原則とは、社員全体の中の2割が優秀、6割が普通、残りの2割りは成長していない社員という比率のことです。
「優秀な2割がいなくなれば、普通の6割から優秀になる人が育ってくる」と松本先生からアドバイスいただき、まったくそのとおりになりました。

成長塾では「勤務態度が悪いときは上位の社員から指導しなさい」と言っています。上の立場の人間と話をつけるのが解決するポイントです。まったくこれと同じでした。
勤務態度の悪い幹部が辞めたので、みんなルールを守るようになりました。

残った人も何回も時間をつくって話し合いをしたので、徐々に納得してもらえたと思っています。

― 先代も最初は賛成されていなかったようですが。

「俺がここまでやってきたんだ。間違いはない」と先代もプライドがありました。先代とも社員と同じように時間をつくり、何回も話合いました。
私が作った成長制度は先代のやってきたことを尊重するもので、否定するものではありません。群協も40年続いている会社ですから、先代が大切にしてきたものや、人との繋がりは継承しています。そのこともだんだんわかってくれて先代も心を開いてくれました。

実は先代の反対には理由がありました。給料を下げることがいかに大変かを知っていたので、心配していたのです。以前不景気で資金繰りが間に合わず、全員の給料を下げたことがあったからです。
この成長制度は根拠のある給料の決め方をしているので、先代も安心してくれました。もっともこの成長制度は給料を下げるためのものではなく、社員を成長させ、給料を上げるために導入しました。

5.群協製作所の成長制度とは

― 群協製作所の成長制度について、詳しく教えてください。

群協では、成長塾で学んだ「成長シート」を活用しています。
「成長シート」は経営者が優秀な社員をモデルに作成し、社員が目指す道を、成果、勤務態度、知識・技術、重要業務という項目に分け、それぞれ「何をどのようにすればいいか」具体的に示しています。

「成長シート」は点数で評価します。ウェートが高いほど重要度が明確になっているので、社員は何をしたらいいのか明確になります。
このシートには上司の評価も書き込みます。社員は自分で評価し、上司の評価をうけることで、自分の成長を確認することができます。
「成長シート」で評価をすることで、経営者や上司は、部下に具体的な指導が継続的にできます。

●群協製作所の成長シート

群協製作所の成長シート

・勤務態度(朝掃除、規律性、協調性)の評価が全体の4割を占めています。
・営業部は専門知識のウェートが高くなります。
・製造部の技術習得は、10種類以上ある機械の操作技術を1台1台評価し、使う頻度の高い機械や扱うのが難しい機械はウェートが高くなります。

6.成長塾の成長制度の導入効果

― 成長塾の成長制度の導入効果をお聞かせください。

一番の効果は社員の勤務態度が良くなり、良い組織風土の会社になったことです。
さらにありがたいことに、この不況下、業界全体が50%も業績ダウンしているなか群協は少しずつですが確実に基礎体力が向上しています。消耗品は景気のバロメーターのようなもので、最初に不況の影響を受けます

ライバル会社が戦意消失している中、営業部では毎月平均25件、新規顧客を獲得してきます。私自身も驚いています。
製造部では今まで新しい技術を学ぶことは、一部の社員しかしていませんでした。今では技術習得率が、半年で1人あたり平均5%上がりました。過去にはありえないことです。

このままいけば今期の業績は昨年対比で15~20%アップは間違いないでしょう。

― このような効果を生み出した理由はなんですか。

成長制度によって社員の勤務態度がよくなったことと、社員が会社の方針や重要業務を理解し、それぞれ自分のやるべき事を遂行していることです。
松本先生が「社員が成長するには、守るべき勤務態度を遵守し、業務を遂行するための知識、技術を習得し、成果を上げるための重要業務が継続できること」とおっしゃっていた通りになりました。
成長制度により社員は勤務態度がよくなり、会社の業績はアップしました。

7.相手が生身の人間だから、成長制度は真剣にやると面白い

― 成長塾を受講して印象に残ったことはなんですか。

gunkyo-5.jpg成長制度づくりを真剣にやると面白いと思いました。相手が生身の人間だから、泣いたり、怒ったり、喜んだりして最後に納得する。
今の会社の状態をいうと、女性の営業が主力となって稼ぎ、社員が将来を信じて一生懸命勉強しているというとこですかね(笑)

成長制度導入後、具体的に印象に残ったことは社員が仕事の満足感をもっていることと、会社がきれいになり社外の評価をもらったことでです。

「社員が仕事に満足感をもっている」
女性の営業たちが「仕事はお金ではなく満足」と言ってくれました。私自身、社員の成長は感じていましたが、そこまで仕事にやりがいや満足感をもっていたことをとても嬉しく思いました。彼女たちは取引先の社長さんから、営業しなくても「いつものアレちょうだい」と注文が入るくらい信頼されています。

「社員の勤務態度がよくなり、会社がきれいになった」
勤務態度が良くなった事で会社がとてもきれいになりました。社内の評価だけでなく、業者さんからは「ずいぶんきれいになったね」と言われます。
ダスキンや電気の検針のおばちゃんからも「群協さんのトイレはいつ来てもきれいだし、社員さんもよく挨拶してくれますね」と言っていただきすごく嬉しいですね。彼女たちはトイレ休憩が群協でできるようスケジュールを組んでいるそうです(笑)

8.成長制度を導入しようと考える経営者へのアドバイス

― 成長制度を導入しようと考える経営者へのアドバイスをお願いいたします。

最初は欲張らず、会社の考え、価値観を成長シートに落とし込むことですね。
「成長シート」の見本を見るとすばらしいので、あれもしたい、これもしたいと思います。私も最初は、責任感、積極性、使命感などもシートの項目に入れたいと思いました。でも冷静になって、私が社員に求めているものは何か考えてみると、ケンカしないでルールを守る、朝みんなで掃除することなんです。

経営者が求めている社員像を、背伸びしたり欲張らずに「成長シート」に落とし込むことです。
社員は急に優等生にはなりませんから、時間をかけてゆっくりと向き合ってください。時間をかければ社員は成長します。

私の夢は、10年後には技術と勤務態度の両方が優秀な社員が大勢うちの会社に揃うことです。そうなればどんな大不況がやってこようが絶対に会社は倒れません。

群協は成長途中の社員がたくさんいたから時間がかかりましたが、やりがいがありました。私どものようにこれから成長する社員がたくさんいる会社はやりがいがありますよ。町工場にはこの成長塾の成長制度はいいと思います。

9.今後の期待

― 成長塾への今後の期待をお聞かせください。

成長塾の成長制度は奥が深いのがよくわかりました。、松本先生も今の状態に100%満足していないと思います。これからもっといい情報が出てくると思いますので、ぜひ教えていただきたいです。
群協の社員は素晴らしい社員になりました。これからはもっと成長して大きな夢を描ける会社にすることが目標なので、松本先生これからもよろしくお願いします。

株式会社群協製作所様、本日はお忙しい中、貴重なお話をありがとうございました。


株式会社群協製作所様のホームページ
※ 取材日時 2009年9月


株式会社シューコーポレーション様(スーパーマーケット・TSUTAYA・惣菜事業 富山県)

2018-06-25 [記事URL]

人は、人を変えられません。社員が自ら変わるきっかけを作る。これが人事制度のカギです

シューコーポレーション"富山県でスーパーマーケット・TSUTAYA事業・惣菜専門店を経営する株式会社シューコーポレーションは、社員が毎日徹底したセルフチェックを行う仕組みを構築し、成果をあげている。代表取締役 北 修(きた・おさむ)氏に詳しいお話をお聞きした。

contents.gif

シューコーポレーションの概要
人事制度の導入効果
シューコーポレーションの人事制度とは
「ただ漫然と働いているだけ」 活気のない職場だった
過去につくった人事制度は、”まったく使えない”ものだった
上司からの命令ではなく、自分の意志で働ける社員を育成したい
人事制度を導入するにあたっての社内の反応
TSUTAYA砺波店は、なぜグランプリを獲ったのか
人事制度を導入しようと考える経営者へのアドバイス
今後の期待

シューコーポレーションの概要

― シューコーポレーションについてご紹介ください。

シューコーポレーションは、富山県で、スーパーマーケット・TSUTAYA事業・惣菜専門店の3つの業態で事業展開している会社です。従業員数は94名(2008年度)、売上高は11億6000万円(2008年度)です。

シューコーポレーションは、”快適生活供給会社”という経営理念のもと、一人ひとりの要求に対応できる、快適なサービス、快適な生活を提供したいと考えて活動しています。

2009年3月、シューコーポレーションの経営するTSUTAYA砺波店は、全国のTSUTAYA 1400店舗のなかから、接客、清掃、売上げなどを総合的に評価する全国大会「TSC(TSUTAYA STAFF CONFERENCE)」で、グランプリを受賞しました。

TSUTAYA砺波店「この舞台に立てるとは夢にも思っていませんでした」

人事制度の導入効果

― 人事制度の導入効果をお聞かせください。

2004年、人事制度を導入するために、第4期成長塾に参加しました。
半年間かけて、全6回の講座を受講しました。

人事制度を取り入れてから、とくに、TSUTAYA事業では月商が軒並み前年を上回るようになりました。2007年には、業界全体が厳しいなか、営業利益が前年対比286%にまで改善しました。

その他の具体的な業績は以下のとおりです。

■主な業績(2009年6月)

前年比 業界平均 出典
●TSUTAYA
  - CD/DVD 108% 96.8%
  - 書籍 106% 104.7% [JASRAC調べ]
●スーパーマーケット 98% 97.3% [日本チェーンストア協会調べ]
●惣菜専門店 112% 103.1% [惣菜白書調べ]

また、シューコーポレーションでは、新入社員の離職率が60%と高く、問題でした。
しかし、人事制度を導入してから、離職率が以前の3分の1の20%程度に下がりました。

― このような効果を生み出した理由はなんですか。

人事制度によって、適正な評価と上司とのコミュニケーションができるようになり、社員がやる気と目標を持てる職場になったからです。

特別なことはなにもしていません。ただ、社員それぞれが自立して行動し、日々の重要業務をしっかりとこなす。そんな土台ができたと実感しています。

TSUTAYAの書籍部門が好調な理由は、「提案力のあるコーナーづくり」です。このコーナーづくりに関して、私は一切関与していません。社員が考案し、社員がチェックしています。

惣菜専門店では、従業員が2週間に一度集まり、新メニューの試食会を行っています。自分たちで材料を決め、自宅でメニューを考えて持ち寄る。これも、現場の従業員が自主的に行っています。

シューコーポレーションの人事制度とは

― シューコーポレーションの人事制度について、くわしく教えてください。

シューコーポレーションでは、成長塾で学んだ「成長シート」と「フィードバックシート」を現場の作業内容に落とし込み、社員が毎日セルフチェックができる仕組みを導入しています。

●シューコーポレーションの成長シート

成長シートは、社員に業務上の課題をあたえ、その課題について社員がセルフチェックするものです。
現場で「どの作業をどの程度こなせば、目標を達成できるのか」を細かく分類し、社員全員で共有しています。目標があっても、それを実現する方法がわからない社員はたくさんいます。そういった社員に、具体的な課題を与え、自らが成長するためのプロセスを把握してもらうのが、成長シートの目的です。

シューコーポレーションの成長シート.gif

◆成長シートの使い方
1.まず3ヶ月間の売上げ目標を設定し、把握します。
2.その目標を達成するための具体的な課題、つまり、現場で行うべき作業をチェックします。
3.それらの課題を、どの程度こなしたのかを、社員自らふりかえって自己評価します。
4.自己評価を受けて、上司が評価のフィードバックを行います。

成長塾では、成長シートを「評価は3ヶ月に1度行う」と言っています。
しかし、シューコーポレーションでは、3ヶ月に1度では少なすぎると考え、「成長日報」を社員に毎日記入させ、上司が毎日コメントしています。人間は毎日くりかえし課題を意識しないと、成長しませんから。

●フィードバックシート

上司が、3ヵ月単位で、評価に関するフィードバックを行うものです。
部下は自己評価をしますが、上司の評価と一致しない場合が多いものです。このままでは、部下は上司の指導を受け入れづらい環境になってしまいます。そこで、上司が(組織的に決まった)評価を伝えることになります。この評価とは、部下の成長確認です。

フィードバックシート

上司が、フィードバックシートをしっかりと書けると、その部下もしっかりとやれるようになります。
上司は、部下に課題を与えるだけではなく、与えた課題を把握しておくべきです。部下の信頼を得て、部下の成長を適正に評価するために、不可欠なことだからです。

「ただ漫然と働いているだけ」 活気のない職場だった

― シューコーポレーションが、人事制度を導入するまでの経緯をお聞かせください。

私には、経営者として「社員全員に夢と目標を持ってもらい、いきいきと仕事をしてもらいたい」という理想がありました。

しかし、以前のシューコーポレーションは、社員もパート従業員も「ただ漫然と働いている」だけ。現場には活気がなく、理想とはかけ離れていました。

社員からは「給料を上げてくれ」「ボーナスが少ない」などの不平不満が多かった。

顕著だったのは、新卒社員の離職率です。人事制度を導入する以前は、60%にものぼっていました。 原因は、上司や先輩にあたる社員に、会社に対する思い入れがなかったこと。せっかく仕事に対する夢や目標を持って入社したのに、現場を見て失望してしまうのです。

― そのような職場環境がつくられた原因は、どこにありましたか。

上司と部下のコミュニケーションがうまくとれていなかったことです。
経営者である私自身、特定の幹部社員としかコミュニケーションをとっていませんでした。

社員は放任状態。「人間として」のつながりはなく、「お金」のつながりがあるだけでした。

社員とコミュニケーションがとれていなくても、業績に問題がなかったことも、原因のひとつだったのかもしれません。

経営的に申し上げますと、ビジネスモデルそのものが成長していく時期ならば、働く人間の様子がどうであれ、業績は伸びると言われています。当時のシューコーポレーションも、そうでした。

しかし、いずれ業務拡大を目指すにあたって、ビジネスモデルだけではなく、人の力が原動力になる時期がくる、と感じていました。

職場の環境を改善し、社員それぞれが、やる気を持って働けるようにしたい。そして、命令に従うだけではなく、自分の意志で働ける社員になってほしい。

そのためには、社員を正しく評価し、適切に処遇を決めるための人事制度が必要だと考えました。

過去につくった人事制度は、”まったく使えない”ものだった

― 職場の環境を改善するためには、具体的に、どのような仕組みが必要だと考えましたか。

最初は、具体的には思い浮かびませんでした。
とにかく、「社員が納得するように、適正な評価をしていれば、やる気のある人材に育つだろう」という程度の認識。「適正な評価」の定義も、当時はあいまいでした。

実は、成長塾に出会う以前、ある人事コンサルティング会社に依頼して、90万円をかけて人事制度をつくったことがありました。 ところが、いざ運営しようとすると、その制度はまったく使いものになりませんでした。

― なぜ、その人事制度は使えないものだったのですか。

その人事制度は、社員の処遇の決定が、私の頭のなかでしか行えない内容だったからです。
例えば、作業内容に点数をつけ、「○点とれば昇給する」「○点になれば賞与をアップする」といった仕組みはありました。 しかし、じゃあ実際に「シューコーポレーションのどの業務の、どの作業に対して、どんな行動をとれば点数が上がるのか」という、具体的な現場レベルでの落とし込みができていなかった。
結局、社員につける点数は、経営者である私の独断で決めるしかなかったのです。
これでは、社員は納得がいきません。自分につけられた点数の根拠が、社長の頭のなかにしかない、というのでは、とても適正に評価されているとは思わないでしょう。
せっかくつくった人事制度でしたが、捨てることになりました。

その後、成長塾と出会い、興味を持ちました。
ENTOENTO(多摩研)の人事制度は、「経営者以外の第三者が見ても、適正に評価できる仕組み」と提唱されていたからです。

上司からの命令ではなく、自分の意志で働ける社員を育成したい

― 成長塾を受講して印象に残ったことはなんですか。

印象に残ったのは、次の3点です。

「誰が見てもわかりやすい方法で、正しく評価し、社員を成長させる制度をつくること」
「評価のポイントは、自社の実際の業務内容に落とし込むこと」
「社員それぞれに具体的な目標と課題を与え、自分の成長過程をセルフチェックさせること」

成長塾ではまず、プロセス管理と目標管理のやり方を学びました。
そして、最初の足がかりとして、「成長日報」を作りました。

この成長日報は、上司が部下に日々の業務の遂行や成果・勤務内容などについての課題を出し、その課題に対して、部下がその日一日をセルフチェックするものです。
そのチェックに対して、上司が評価をし、コメントを書きこみます。

試作段階では、私と当時9人の社員全員とで、この成長日報のやりとりを行いました。手書きで毎日続けること1年半。社員との強いコミュニケーションツールともなり、のちの人事制度のベースとなりました。

成長塾全6回の講座が終わり、最初に「成長シート」を運用しました。
成長日報も、自分なりに細かく変化させ、いよいよ本格的な人事制度を導入しました。

人事制度を導入するにあたっての社内の反応

― 人事制度を導入するにあたって、社内からの反発が起きることがよく聞かれますが、シューコーポレーションの社内の反応はいかがでしたか。

全員を適正に判断し、一丸となって会社を成長させたい反発はありませんでした。

やはり、経営者だけが儲かる仕組みを考えていれば、社員はついてきません。社員には、「みんなをしっかりと評価して、利益ができれば還元したい。みんなでがんばれる環境づくりをやろう」と説明しました。

たしかに、全員が100%納得できる人事制度ではなかったかもしれません。しかし、試作段階に、手書きで成長日報のやりとりを続けてきた社員をはじめとして、人事制度を理解して、引っ張ってくれる存在があります。社員にこの制度の重要性を認めてもらえたから、うまくいくのです。

現在、シューコーポレーションでは、チーフクラス以上の社員が集まり、制度そのものを考え直す「成長会議」を定期的に行っています。まだまだこれからも改良を加え、よりよい制度に進化させていきたいと考えています。

TSUTAYA砺波店は、なぜグランプリを獲ったのか

― 2009年3月、シューコーポレーションの経営するTSUTAYA砺波店は、TSUTAYAの全国大会「TSC」でグランプリを獲得し、全国1400店舗の頂点に立ちました。このように高い評価を得たのはなぜでしょうか。

人事制度が、シューコーポレーションに「基礎体力」をつけたのです。

成長塾を通して学んだことは、「日々の重要業務をしっかりと行えば、成果があがる」ということ。
「売上げをあげろ」「利益をあげろ」と言うのは簡単です。しかし、どうすれば売上げはあがるのか、目標を達成するには毎日なにをしなければいけないのか。それを社員に明示するということです。

シューコーポレーションにとって、もっとも重要なのは「勤務態度」でした。
土壌が悪ければ、良い作物ができないのと同じで、勤務態度が悪い店は、業績が上がりません。
そこで、勤務態度を向上させる仕組みをつくろうと思いました。
成長塾では、「社内で一番優秀な社員を見本にする」ことを学びました。社内では、「勤務態度の良い社員を見本にしてつくった成長シートを目標にしなさい」と教育しています。

勤務態度を高めるために、新入社員には「整理整頓」「あいさつ」を徹底させています。
知識や技術は、経験を積めばいずれ得られます。しかし、土台となる「姿勢」は、最初にしっかり教育するべきです。

このような地道な「基礎体力トレーニング」の成果が、グランプリ獲得につながったのです。

人事制度を導入しようと考える経営者へのアドバイス

― 人事制度を導入しようと考える経営者へのアドバイスをお願いいたします。

「社員を成長させる」こと

業績を上げることの前に、社員を成長させたいという思いがあるかないか。これが、人事制度のスタート地点です。
「社員が成長する」=「会社が成長する」。この基本があるから、業績が上がる。
社員たちに、どう成長してほしいのか。それを仕組みにして伝えるということです。
人は、人を変えることはできません。働く社員が、自ら変わるきっかけをつくる。それが、人事制度の成功のカギだと私は思います。

「成功事例は意味がない」

「いいノウハウはないか」「同業種の成功事例を知りたい」と求めても意味はありません。気持ちはわかりますが、人事制度は、他社のものまねでは成果は上がりません。自社には自社の土壌があり、その土壌を育てることが大切だからです。
たとえば、TSUTAYA砺波店がグランプリを受賞したからといって、その仕組みをそっくりマネして、同じTSUTAYAチェーンの他店に持ち込んでも使えない、と私は断言します。

「トップが真剣になる」

人事制度は、経営者が頭ごなしに「この制度でやるぞ!」というだけではうまくいきません。その制度に対する経営者の思いが、いかに真剣なのかを、社員に認めてもらうことが大切です。

今後の期待

― 成長塾への今後の期待をお聞かせください。

日本には、人事制度が必要な中小企業がまだまだたくさんあります。
しかし、人事制度に着手しないのは、人事制度に誤解があるからでしょう。
最終的には、「人」が利益をあげます。「人」の部分に焦点を当てなければ、経営はうまくいかない。その仕組みをつくるのが成長塾です。

成長塾は単なる勉強会ではなく、中小企業の生き残りと発展のための、ひとつの大切な節目であると考えます。ぜひ今後も、成長塾のノウハウを全国に広げていただきたいと期待しています。

株式会社シューコーポレーション様、お忙しい中、貴重なお話をありがとうございました。


株式会社シューコーポレーション様のホームページ
※ 取材日時 2009年7月


『日経レストラン』2016年3月号

2016-03-01 [記事URL]

日経レストラン3月号

『日経レストラン』2014年4月号より、弊社代表・松本の12ヵ月間の連載がスタートしました。
好評につき、引き続き連載しております。
『日経レストラン』2016年3月号(P82-P83)のテーマは「やる気を生む! 人材育成の仕組み作り(24) スタッフの成長度で閉店を判断 好調な既存店への影響を避ける」です。


『日経レストラン』2016年2月号

2016-02-01 [記事URL]

日経レストラン2月号

『日経レストラン』2014年4月号より、弊社代表・松本の12ヵ月間の連載がスタートしました。
好評につき、引き続き連載しております。
『日経レストラン』2016年2月号(P74-P75)のテーマは「やる気を生む! 人材育成の仕組み作り(23) 欲しい人材像を明確にできる 「成長シート」は面接にも有効」です。


『日経レストラン』2016年1月号

2016-01-04 [記事URL]

日経レストラン1月号

『日経レストラン』2014年4月号より、弊社代表・松本の12ヵ月間の連載がスタートしました。
好評につき、引き続き連載しております。
『日経レストラン』2016年1月号(P64-P65)のテーマは「やる気を生む! 人材育成の仕組み作り(22) 処遇の決め方を明らかにして モチベーションを高める」です。


『日経レストラン』2015年12月号

2015-12-01 [記事URL]

日経レストラン12月号

『日経レストラン』2014年4月号より、弊社代表・松本の12ヵ月間の連載がスタートしました。
好評につき、引き続き連載しております。
『日経レストラン』2015年12月号(P76-P77)のテーマは「やる気を生む! 人材育成の仕組み作り(21) 部下のわずかな成長にも気付き モチベーションを高める」です。


『日経レストラン』2015年11月号

2015-11-01 [記事URL]

日経レストラン11月号

『日経レストラン』2014年4月号より、弊社代表・松本の12ヵ月間の連載がスタートしました。
好評につき、引き続き連載しております。
『日経レストラン』2015年11月号(P74-P75)のテーマは「やる気を生む! 人材育成の仕組み作り(20) 仕事の全体像を明確に伝え キャリアプランを作成する」です。


『日経レストラン』2015年10月号

2015-10-01 [記事URL]

日経レストラン10月号

『日経レストラン』2014年4月号より、弊社代表・松本の12ヵ月間の連載がスタートしました。
好評につき、引き続き連載しております。
『日経レストラン』2015年10月号(P66-P67)のテーマは「やる気を生む! 人材育成の仕組み作り(19) 新業態の開発でも 「成長シート」でやる気を引き出す」です。


『日経レストラン』2015年9月号

2015-09-01 [記事URL]

日経レストラン9月号

『日経レストラン』2014年4月号より、弊社代表・松本の12ヵ月間の連載がスタートしました。
好評につき、引き続き連載しております。
『日経レストラン』2015年9月号(P74-P75)のテーマは「やる気を生む! 人材育成の仕組み作り(18) 人事評価に継続性を持たせ 「事業承継」を円滑に進める」です。


PAGE TOP




MENU

CONTACT
HOME