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第177話 2024年新卒の初任給の見直しが必須です

2023-10-03 [記事URL]

最低賃金が大幅に上がったことで、2024年卒の初任給も上げざるを得なくなりました。

実際に初任給を上げる会社が増えてきています。東京都では10月1日より最低賃金が1113円になったため、所定労働時間が174時間の会社であれば、高卒の初任給は19万3662円以上でなければ最低賃金を下回ることになります。東京都の高卒初任給は今までおよそ18万円でした。この19万3662円を下回る会社は、賃上げすることが必須です。

さらに大卒の初任給も上げる必要があります。高卒と大卒の初任給は現状で約4万円差があるため、大卒初任給は少なくとも23万円以上にせざるを得なくなります。

もちろん、既存社員の賃金が大卒初任給23万円を下回るわけにもいきませんので、こちらも上げざるを得なくなるでしょう。社員全体の賃金が上昇することで、一気に労働分配率が悪化して利益が減少する可能性があります。

今後は初任給を大幅に見直す企業が増えたため、現在の大手企業と中小企業で採用力に大きな違いが出ています。

すでに今の就活生は、初任給の金額を見て就職先を決める傾向が強くなっています。3年前であれば企業規模によって初任給が変わることはほとんどなく、地域による差だけでした。

しかし、これからは企業規模によって初任給に差ができてしまい、初任給によって選別されるようになります。これは今後最低20年間、改善する可能性はほとんどありません。人口が増加しない限りは、この問題が解決することはありません。賃金を上げられるほどの利益が企業になければ、採用はますます厳しくなり人材不足が続くことになります。

利益を増やして賃金を上げなければ中小企業は採用することができない時代になりました。
この経営環境でやるべきことは、現在いる社員を生産性の高い社員に成長させることです。特に、1時間当たりの労働生産性(付加価値÷労働時間)を上げる必要があるでしょう。

どの会社にも生産性の高い社員がいます。生産性の高い社員と低い社員で、生産性の差は通常 1.5倍以上あります。生産性の高い社員がやっている仕事のやり方を可視化し、共有化することでこの緊急事態を乗り切ることができます。

自社にあるものを共有化するだけだからです。組織全体で新しいことに取り組むことには時間がかかりますが、自社の優秀な社員がやっている生産性の高いやり方を組織の中に共有化させるだけなら、その共有のスピードは格段に早くなります。

会社全体の生産性を上げることで、賃上げは可能になります。
例えば、「1時間あたりの労働生産性が現状の3600円から3708円になったら、賃金を3%上げます」と説明ができるようになります。

この説明で、会社が賃上げしたいと考えていることを社員は理解します。そのためには優秀な社員が行っている生産性の高いやり方を真似すればいいだけだと分かれば、社員は生産性を上げることに邁進していくでしょう。

生産性を上げることは経営課題の中で最も優先順位の高い課題になりました。
今すぐ、生産性の高い社員のやり方を社内に共有化してください。その共有化をするためには「成長シート」が役に立ちます。成長シートはもうつくられましたか?


第176話 飛躍的に生産性が向上できる会社の特徴

2023-09-26 [記事URL]

生産性を上げるために、作業効率だけを求めていても限界があります。

1時間当たりの労働生産性は、粗利益÷労働時間で計算することができます。生産性を上げようと考える多くの人は、この計算式の「労働時間」を短くすることを考えます。

仕組みをつくることでこの労働時間を短くすることは可能です。極端なことをいえば、仕組みによって今やっている仕事をやらなくても成果を上げられるようになる可能性はありますが、ただし、今やっている仕事を全てなくすことは現実的に考えて無理でしょう。

しかし、新商品を今まで以上の高付加価値で販売することは可能です。つまり、生産性向上は労働時間を短くする以上に、高付加価値な商品・サービスを開発することに取り組むことなのです。

新しい商品や新しいサービスを開発するとなると、とても難しく、専門的な知識がなければできないというイメージがあるでしょう。しかし今いる顧客のニーズを分析し、それに応えられる商品・サービスを新たに開発すればいいだけの話です。

その顧客ニーズはどこにあるかというと、現場で働いている社員とお客様の間に発生しています。お客様と会話をしていると「○○が欲しい」「□□で困っている」等々、お客様の困っていることやニーズを直接聞けることがあります。

優秀な社員はその声を拾ってニーズに応えられる新商品・サービスを提供する努力をするでしょう。さらに優秀な社員は、実際の要望だけでなく顧客自身も気が付いていない「潜在ニーズ」を発見しています。これにより顧客満足度がとても高く、他社には真似できないような新商品・サービスを提供しているのです。

つまり、生産性を高めるために大切なことは、お客様も気が付いていない潜在ニーズをとらえ、それに対応できる商品・サービスを提供することです。

このこと自体は高付加価値の新商品・サービスを提供できることにつながるため、時間の短縮を考える以上に大きな生産性向上になります。独自的なものであれば、値引き交渉はされません。

一般階層の社員は自分で仕事をして顧客に喜んでもらう、プレーヤーの階層です。しっかりと顧客のニーズを捉え、それに対応することがこの会社の使命であると学べる階層といえるでしょう。

このように成長することで、会社の20年後30年後の事業展開を、既に一般階層の現場で培ってきていることになるでしょう。

この顧客のニーズは日々変化していきます。その変化を把握できるのも、顧客と直接やりとりをする一般階層の社員でしょう。この変化するニーズに対応している社員は「環境適応社員」と呼べます。

今は「マネジメント」という言葉で上司が部下を指導して成果を上げていることばかり強調されています。これでは上司が過去のニーズを基に部下指導をするため、部下は上司以上に成果を上げることはできないでしょう。

上司は現場の部下が把握した顧客ニーズを早期に収集し、新商品・サービスの検討をすることが求められます。

生産性を上げるための対策は立てていますか?

 


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第175話 最低賃金1500円時代の到来に向けて準備する

2023-09-19 [記事URL]

毎年仮に3%の賃上げをしていくと、東京都の場合10年後の2033年には最低賃金が約1500円になります。現状でも、過去最大の引き上げ41円アップは、中小企業にとって頭の痛い問題です。

最低賃金を上げることによって間違いなく人件費はアップするため、労働分配率を一気に悪化させる可能性があるでしょう。中小企業はその余力があまりないかもしれません。しかし、中小企業でも賃上げすることは決して不可能ではありません。

もちろん賃上げするためには、その賃上げに見合った売上・粗利を上げることが必要になります。特に現在、日本では1時間あたりの生産性「人時生産性」の向上が求められています。生産性を向上させることができれば、賃金を上げることは可能です。

同じ会社の社員でも生産性の高さは大きく違います。生産性を向上させている優秀な社員と、生産性がなかなか上がらない社員が混在しています。その差は今までの経験上、1.5倍以上はあります。

その生産性の違いは「やっていること」の違いです。仮に現在の人時生産性が平均3000円だとして、その優秀な社員が生産性を向上させているやり方を全社員に共有化し、全社員が真似すれば1.2倍の3600円まで上げることは簡単なのです。

それだけではありません。実際に優秀な社員のやり方を真似して全員が高い生産性を上げられたとき、社員はそれ以上の生産性を実現するために様々な工夫をするようになるでしょう。つまり、この3600円が最終ゴールではなく4000円、4500円と人時生産性を押し上げることができるのです。

私はかつて人時生産性2600円から5600円の実現を経験しました。これは新しいことに会社が取り組んだのではなく、会社の中にある優秀な社員がやっていることを共有化したに過ぎません。この共有化をすることが一番のポイントです。

同じ会社の社員がやっていることを難しいと考える社員はいませんでした。そのため、社員は共有化したそのやり方にいち早く取り組み、高い人時生産性をすぐに実現できたのです。

今こそ、この人時生産性の向上に取り組む必要があります。しかし、人時生産性は「粗利益÷総労働時間」で計算されますが、日本全体では、生産性を向上するために労働時間を短縮することばかり考えているのが現状です。

人時生産性を上げる最も大切なことは粗利益を増やすことです。その粗利益を増やす方法を社員間で共有化することがとても重要なのです。では、粗利益はどこで稼ぐのでしょうか。それは当然、現場です。現場の社員のやっていることを共有化することによって、この粗利益を増やすことができるのです。

現在、残業の上限規制をしている日本では、残業して粗利益を稼ぐ方向性はもうありえません。短い時間で粗利益を稼ぐことであれば、反対する社員は誰もおらず、笑顔で取り組むでしょう。そして自身の行動によって粗利益を増やすことができるのであれば、社員は「もっと挑戦しよう」となるでしょう。

これからの日本では 現場の社員が新しいことにどんどん挑戦することを認めることです。ただし、この結果としての成果を人時生産性で見るとき、挑戦は全て成功するとは限りません。そのため、これから様々な挑戦を求めても失敗は決して評価しないことを社内に宣言しなければなりません。

貴社は社員の挑戦が失敗したときに、マイナス評価をしていないでしょうか。

 


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第174話 毎年賃金をリスクヘッジして上げる方法

2023-09-12 [記事URL]

これから毎年、賃金を3%以上は上げると発表する経営者が増えてきました。今後も多くの会社が賃上げ率を発表するようになるでしょう。

平均賃上げ率3%は、平均給与30万円の会社であれば一人当たり9000円賃金を上げたことになります。この金額を見ると、とてもリスクがあるように感じるでしょう。しかし、リスクのない賃金の上げ方があります。その方法であれば、経営者の悩みを解決することができます。

賃上げすることが会社のリスクになる理由は、業績が厳しいときでも一度上げた賃金を下げることができないからです。そのため、社員に正しい教育をしなければなりません。

全ての経営者は、業績のいい時に賃上げをします。この賃上げに最も影響を与えるのは、業績の良し悪しであることの教育が必要でしょう。

仮に賃上げ率3%であるとすれば、賃金を3%上げるために必要な売上高・粗利益は簡単に計算できます。つまり、賃上げ率3%を実現するための売上高・粗利益は、前もって社員に経営目標として説明できるのです。

この説明ができれば、社員は大切なことを学びます。
「経営目標の売上高や粗利益が達成できなければ、賃上げ率3%は実現しない」
決して会社が賃金を出し渋っているわけではありません。

社員は賃金を上げてもらいたいと考えているでしょう。そのためにどうしたら良いかを考えてもらう必要があります。それが業績の向上です。

業績を向上するために一番簡単で早い方法は、我が社の優秀な社員が成果を上げているやり方を、全社員が学び実践することです。それができれば、社員の成果が上がり、結果として会社全体の業績を上げることができます。

そのために今、激動の環境でも間違いなく成果を上げている優秀な社員のプロセスを成長シートで可視化し、全ての社員に共有化をしなければなりません。

「業績を上げる方法」と社員が聞くと、とても難しいとイメージします。しかし同じ会社の同じ社員がやっていることであれば、決して難しいという思いにはなりません。この優秀な社員をモデルにした成長シートは、まさにこの賃上げ率3%を実現するために最も重要なツールになるでしょう。もしまだ成長シートを作成してなければ、今すぐ作成をしてください。全社員が成長シートで成長します。

これからの日本では「賃上げ率」が大きく注目される経営指標になります。その関心に沿った形で経営目標を立てるときが来たといえるでしょう。貴社では、社員に賃金を3%上げると宣言できるでしょうか。

 


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弊社代表の松本の記事が「現代ビジネス」に掲載されました!

2023-09-08 [記事URL]

9月8日に弊社代表の松本の記事が「現代ビジネス」に掲載されました!
ぜひご覧ください。

<前編>:35歳社長が青ざめた…
「高い実績をアピールする中途社員」を高給で採用したら「最悪の結果」に
https://gendai.media/articles/-/114689

<後編>:28歳中途社員が絶句…
「同業界なら大丈夫」と転職したのに半年で退職を決めた「最大のギャップ」
https://gendai.media/articles/-/114690

他サイトにも転載されています。

◎Yahoo!ニュース
前編:
https://news.yahoo.co.jp/articles/fb37bc953dab760ca30f6b0db3f0a8449f76aec8
後編:
https://news.yahoo.co.jp/articles/972e5cb28f6584d17092a9b9351f91edae5c2424

◎livedoor News
前編:https://news.livedoor.com/article/detail/24948027/
後編:https://news.livedoor.com/article/detail/24949014/


第173話 評価シートは経営者によって異なる100人100種類

2023-09-05 [記事URL]

経営者が評価制度をつくるときに悩むことは、「何を評価したらよいのか」です。社員を評価する内容について学んだことがなければ、なおさらのことでしょう。

そこで、コンサルタントや専門家等の第三者から評価シートをもらうことになりますが、これが失敗の始まりです。

そもそも、経営者は社員の何を評価したらよいかを学んでいなくても、普段からやっていることがあります。それは社員を褒めたり叱ったりすることです。

過去1か月を振り返ってみれば、さまざまななことで社員を褒めたり叱ったりしていたことに気が付くでしょう。つまり経営者は、常に社員を評価しながら経営をしています。

その評価に基づいて行っているのが社員の指導です。できていないことをできるようにする。分からないことを分かるようにする。守っていないことを守るようにする。経営者は社員を評価した後に指導しています。評価しなければ社員の指導はできません。これが鉄則です。

これをしっかりと理解してもらえば、評価シートを第三者から受け取ってはいけないことが分かります。

評価シートは業種ごとにつくるものではありませんし、企業規模ごとにつくるのでもありません。経営者ごとにつくるのです。なぜなら経営者によって「何を評価しているのか」が、全く違うからです。つまり経営者ごとに評価シートは違うことになります。

そして大切なことは、評価は経営者の成長によって中身が変わっていくことです。経営者はさまざまなことを学び、成長します。その成長に伴い、経営者が評価することは変わってきます。ですから、評価シートは経営者が自分でつくらなければならないのです。

経営者自らつくることで、あることが分かります。それは、今まで評価していたことが社員には見えていなかったことです。

それは評価される社員の立場から見れば分かります。社員は今の会社に在職している以上は経営者に褒めてもらいたいと思っています。ところが経営者が何を評価しているかが社員には分かりませんでした。

成果の大きさを褒めたり、やっていることを褒めたり、知識技術の習得度合いを褒めたり、勤務態度の良さを褒めたりと、社員やタイミングによって褒めている内容が違います。そのため、社員としては結局何を褒められているのか整理がつかないのです。

その褒めている内容を1つの評価シートにまとめたらどうでしょう。社員は「社長に褒めてもらうように成長していきたい」と考えています。これを自己育成と言いますが、経営者が評価シートを自らつくることによって、評価シートに書いてあることができれば必ず褒めてもらえる、つまり社内で評価されることは何であるか可視化されたことになります。

評価シートによって社員は自己育成ができ、同時に上司は部下に統一した指導をすることができるようになります。社員本人にとってもいい、上司にとってもいい評価シートをつくることが、社員を成長させる最も簡単で、そして早い方法です。

もし「社員の何を評価したらよいか分からない」と思ったら、過去1か月間自分は何を褒めてきたのか振り返ってください。間違っても私に、「当社の業種、または規模に合った評価シートをください」と求めないでください。

自社で作成した評価シートはお持ちでしょうか?

 


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山陽パッケージシステム株式会社様(包装物流業 広島県)

2023-09-01 [記事URL]

事業拡大による従業員の増加への対応と大手企業のブランド力に対抗するため、成長塾を受講し人事制度づくりを学ばれた山陽パッケージシステム株式会社 代表取締役 小林 大敏氏に、その経緯と効果について詳しく伺いました。

●会社プロフィール
社名:山陽パッケージシステム株式会社
所在地:〒720-2113 広島県福山市神辺町旭丘50(神辺工業団地)
代表者:代表取締役 小林 大敏
資本金:4,300万円
設立:1977年2月
社員数:90名(契約社員・パートを含む)
事業内容:包装物流に関して、重包装から一般段ボール包装を含む化粧箱、化成品、諸資材の設計開発・製造・販売、その他CAD/CAMシステムによる包装・物流に関するコンサルティングサービス、前各号に付帯する一切の業務
URLhttps://www.sanpake.co.jp/

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1.包装物流を企画、設計、製造、納品までワンストップで提供

――山陽パッケージシステムの会社概要をお聞かせください

当社はお客様の大切な製品を守るため、包装・物流システム全体の問題点を正しく把握し、梱包形態、輸送方法、保管を勘案したうえで最適な素材、最適な形状を設計し提案する包装物流の会社です。お客様の大切な製品は大きさや形が異なり、さらに輸送方法もトラックや貨車、航空機などさまざまで、梱包物流のスタイルも多種多様です。そこで当社は、お客様のご要望をヒアリングし、企画から設計、製造、納品までワンストップで提供できる体制を構築しました。この体制を基盤に品質の維持、作業性の向上、資材の削減、環境負荷の低減、誤包装の防止などを考慮したうえで、段ボール、樹脂、木材、金属から最適な梱包素材をご提案させていただいております。結果、全国より多くのお客様から「包装物流のことなら山陽パッケージシステムに」とお問合せをいただける会社へと成長することができました。

広島県福山市の本社工場

お客様はものづくりを手掛ける大手企業が大半。近年は自動車部品メーカー様とのお取引が増加しており、本社工場がある広島県福山市だけでなく、2014年からは埼玉県幸手市に埼玉工場を建設して包装物流を展開しています。2023年は愛知にも営業所を開設、さらなる事業の拡大を目指しています。社会に必要とされる会社となるため、これからも進化を続けていく所存です。

――小林社長が山陽パッケージシステムに入社された経緯をお聞かせください。

山陽パッケージシステムは、1977年に私の叔父が創業した会社です。学校を卒業する前から叔父には「会社を継いでほしい」と声をかけられていましたが、卒業後はとりあえず大手素材メーカーに就職。サラリーマンを続けつつも、「一度きりの人生だし、自らチャレンジできる環境で仕事がしたい」と思い、1992年に山陽パッケージシステムに入社しました。

当時の山陽パッケージシステムは自社工場の生産能力が低く、製造のほとんどは外部の協力工場に依頼している状況。売り上げは2億円ほどでした。そうしたなかで営業を中心に会社で実務経験を積み、2002年に事業承継して山陽パッケージシステムの代表取締役に就任しました。

2.従業員の働き方を定量的に評価できる人事制度が必要

――成長塾を受講された背景をお聞かせください。

大きく2つありました。1つ目は会社が成長し、規模が大きくなってきたことです。代表取締役就任当時はパートを含めて20名程度の会社でしたが、その後、約10年がむしゃらに走り続けた結果、気づくと従業員50名ほどの会社になっていました。ただし、業務をこなすことで精いっぱいだったため、この規模でも管理部門はありませんでした。しかも、給与計算は相変わらず私が鉛筆なめなめで行っている状況。正直、私一人で人事全般を見るのは厳しい状況と言わざるを得ません。そこで、人事制度の導入が必要だと感じるようになりました。

2つ目は大手企業のリクルートで従業員が引き抜かれてしまうことです。大手企業は繁忙期に入ると数百名単位のリクルートを実施。その際、当社の従業員も大手企業のブランド力に惹かれて転職してしまうケースが多々ありました。当社としては大事な人材を取られてしまうのは大きなマイナスです。そこで、たどり着いたのが人事制度です。従業員の働き方を定量的に評価し、働きに見合った処遇(昇給・賞与)を与えることができる人事制度が当社にあれば、人材の流出を防げるかもしれないと考えるようになりました。

――成長塾の受講に至った経緯をお聞かせください。

さまざまな本などを参考に、人事制度の導入に取り組みました。まず、大手企業4,000余社を指導し、超優秀企業を数多く育てた方の本を参考にしました。実際、導入を試みようとしましたが、すぐに合わないと判断。数万人規模の大手企業が求める人事制度と、当社のような数十名の中小企業が求める人事制度では根本が大きく異なっていました。

ライン化により効率性の高い生産が可能。5S運動により、工場内の清掃も行き届いています

そんなとき、知り合いから偶然松本先生の冊子をいただきました。タイトルは覚えていませんが、書かれていたのは松本先生が提唱する人事制度の手法でした。読み進めるなかで「これだ」と電気が走りました。とくに松本先生が言う業務の可視化は、今でこそメジャーになりつつありますが、当時は新鮮そのもの。すぐに詳しく知りたいと思い、2012年2月に経理を担当している妻と一緒に成長塾を受講しました。

3.受講後すぐに仮運用から本運用へ

――人事制度の運用状況をお聞かせください。

受講の半年後には、成長塾で学んだ人事制度を仮運用で導入。2015年からは、給与と連動した本運用を開始しました。大変だったのは、やはり成長シートづくりです。当社の場合、営業部、営業企画部、製造部、業務部、総務部、経営企画部の計6つの部門に一般・中堅・管理職という階級があり、それぞれに成長シートを作成しなければなりません。単純に計算して18種類の成長シートが必要になります。

さらに、会社が求めるものと従業員が行う業務のベクトルを合わせるため、毎年、成長シートのブラッシュアップが必要です。加えて、成長シートは社会情勢や会社の現状に則したものでなければならないと考えています。実際、少しずつ会社の業種業態も変化していますから、そういった部分も加味して成長シートを更新しています。

フィードバックと成長支援会議は、現場が忙しいため、どちらも年2回行っています。松本先生が推奨する年4回は難しいですが、フィードバックと成長支援会議を繰り返すことによってPDCAが回りますから、従業員の業務への取り組み方が変わってきたと感じます。とくに「給与水準を上げていこう」という雰囲気が会社のなかに漂い始めているのは良い傾向だと思っています。

――人事制度導入後の定量的効果をお聞かせください。

2015年4月~2016年3月をBefore、2022年4月~2023年3月をAfterとし、人事制度導入直後と直近を比較した定量的効果を以下に示しました。ご覧の通り、売り上げはもちろん、すべての項目で数字が向上。今期の売り上げ目標は19億円に置いています。

4.成長支援制度を仕組み化し、従業員の成長を後押し

――人事制度の導入で効果を感じるところを教えてください。

主には以下の2つで効果を感じています。

<定着率の向上>

もともと従業員から不平不満が出るような会社ではありませんでしたが、人事制度導入後は、明らかに定着率が向上しました。それは、人事制度が従業員に納得感を与えつつ、成長を促すことができるからだと考えています。例えば、入社して2~3年も経過してくると先輩風をふかし始めるというか、存在感を出してくる従業員がいますが、そんなときは成長シートを通じて可視化された勤務態度や業務への取り組み方などをもとに、現在の評価を説明します。すると、すぐに現状を理解してもらえます。そして、理解することで次の成長が見えてきます。このプロセスには納得感も伴いますから、辞めるという発想には至りません。これが定着率に寄与していると考えています。

<成長支援制度の策定>

人事制度をもとに賃金テーブルを作成し、成長階層によって従業員のおおよその給与が分かる仕組みにしています。さらに、賃金テーブルに加え、キャリアパスを設定するなど、成長支援制度として仕組み化。この成長支援制度はPowerPointに落とし込み、新卒採用時に利用しています。

実は当社の多くは新卒で、人事制度導入前から毎年5名前後を採用しています。以前は新卒採用に苦労していましたが、人事制度を導入し成長支援制度を策定してからは、採用がスムーズに進むようなりました。会社説明会などの際、成長支援制度のPowerPointを見せることで、当社がどれだけ従業員の働き方に配慮し、成長を支援しているか理解してもらえます。

設計専門スタッフが3台のCAD CAMを使い、スピーディーな設計ができる体制を整えています。

5.広島県の上場企業の給与水準に合わせることを目標に

――人事制度の導入後、目指している試みなどはございますか。

現在、目指しているのは給与水準の向上です。経営者にとって、従業員から「給与が安いから生活できません」と言われることは、もっとも辛いことのひとつです。人事制度導入も、そういった不満が出ないようにしっかり従業員の業務を可視化して適正な処遇を与えたいという想いがありました。

給与水準の向上のため、具体的には広島県の上場企業の給与水準を参考にしています。広島県の上場企業40社以上の決算書を取り寄せて、それぞれの企業の平均給与をExcelに入力。それをもとに当社の給与と比較しています。今はまだ8%ほどの開きがありますが、少しずつ差は埋まってきています。先ほど「給与水準を上げていこう」とお話させていただきましたが、実はこうした私の想いも影響しています。

この私の想いに従業員も同調し、どうすれば給与水準を向上させることができるか考えるようになりました。まず、他社と同じもの、同じサービスであれば給与の向上は望めません。ですから「コスト競争力で負けない」「オリジナル仕様を確立する」など、どう差別化を図っていくかを真剣に考え始めるのです。まだまだ全従業員がそういう意識ではありませんが、ベクトルの方向性は定まってきていると感じます。そして何よりも、当社にはそうした従業員の頑張りに応える人事制度の仕組みがあるというのが、私と従業員の大きな支えになっています。

6.人事制度は経営者側と従業員が成長していくための重要な制度

――人事制度に悩んでいる企業に向けて、御社からアドバイスがあればお願いします。

人事制度を導入すると、経営者側に不利になると思われている方がいらっしゃるかもしれません。しかし、決してそうではありません。人事制度は経営者側と従業員とのコミットメントであり、お互いが成長していくための重要な制度です。とくに松本先生の人事制度は、そのコミットメントのベースとなる成長シートを通じ、成長度が目に見えて分かります。まずは、成長塾の受講をおすすめします。

――最後に一言お願いします。

松本先生に助けていただいた一人として言えるのは、「先生には健康に気をつけながら少しでも多くの中小企業を支援し続けてください」の一言です。これからも何卒よろしくお願い申し上げます。

山陽パッケージシステム株式会社様、お忙しい中、貴重なお話をありがとうございました。

※山陽パッケージシステム株式会社様のホームページ(https://www.sanpake.co.jp/)
※取材2023年5月


第172話 評価はなぜ1年間に4回必要なのか?

2023-08-29 [記事URL]

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経営者の悩みの1つに「社員の評価を決める」ことがあります。本人評価と上司評価、そして組織的な評価を決めるため、かなりの時間を必要とします。そのため、できれば社員の評価を年に2回にしたいと考える経営者が多いようです。

評価の目的の1つは、社員の昇給・賞与を決めるためです。そのためだけに評価を決めると考えている方が多いでしょう。

しかし実は、昇給・賞与を決める以上に大事なことがあります。それは、評価が決まらない限りは有効な部下指導ができないことです。

例えば、ある成果を上げるための業務を「重要業務」と言いますが、その重要業務の遂行度を5段階で評価するとき、その社員が果たして1点なのか2点なのか3点なのか4点なのか5点なのか、評価を組織的に決めてフィードバックしない限り、上司は部下に対して的確な指導ができません。

仮に社員の評価を年2回、つまり半年に1回行うとすれば、上司は部下がどれだけ成長しているのか、そして部下本人は自分の成長度合いが半年間分からないままになります。

部下に対する指導は、組織的に決まった評価に基づいて行うことになります。部下は成長度合いを評価フィードバックで確認し、上司はそれに合わせた指導を行わなければ的確な指導にはなりません。年2回の評価では、半年間とても曖昧な指導しかできないことになります。曖昧な指導では決して部下の成長の役に立ちません。

本来、的確な部下指導のために評価をするのであれば、評価は毎月すべきでしょう。しかし、この評価を決めるための時間を毎月組織的に取ることは難しいでしょう。そこで、1つの妥協案として3か月に1回の評価になります。

仮に3か月に1回評価を行った際、本人評価と上司の評価のギャップ、または上司間の評価のギャップ(評価の甘辛)、または上司と経営者の評価のギャップが存在している間は、決して的確な部下指導ができていないことを表しています。このままでは部下を成長させることはできないでしょう。

この問題が解消されるとき、具体的には上司による部下の評価が組織的に評価を決める際に覆ることがない、つまり上司の評価=会社の評価になれば、この段階で組織的に評価を決めることは半年に1回でいいとなります。

上司の評価が常に組織として正しい評価になったことが確定すれば、その評価を基にして後々の昇給・賞与を決めることができるようになります。それまでは最低でも3か月に1回は必要でしょう。

私たちには忘却曲線があります。1か月も経つと8割のことを忘れてしまうのです。そのため、上司が6か月も前の部下の成長度合いを評価すること自体、相当な困難を伴うでしょう。

最低でも3か月に1回は社員の評価を決め、そしてフィードバックすることは必要であり、全上司が部下の評価を的確にできるようになってから半年に1回にすることです。評価を決めることは大変なことですが、それまでは3か月に1回評価してください。

社員の評価は年に何回行っているでしょうか?


第171話 中途採用で押さえるべき経験より大切なこと

2023-08-22 [記事URL]

中途採用する時に求めていることは何でしょうか? 一般的に即戦力を求めているでしょう。中途で採用する以上、早期に成果を上げる優秀な社員を採用して経営を楽にしようという考え方は、当たり前といえば当たり前でしょう。

しかし、それだけの実力があるかどうかは、入社してみないと分かりません。日本の場合、面接時には「何ができるか」ということばかりが採用の決定要素になっています。大事なことは入社後にどれだけの成果を上げることができるか、応募者に入社前に明確に数値で説明してもらわなければなりません。

中途採用の場合には事業規模の急拡大、または欠員募集といった緊急度が高い採用のために、採用時の賃金が高額になることは往々にしてあります。

基本的に、入社から半年も経てば社員が実際どれだけの実力を持っているか明確になります。このとき、面接時の評価と入社半年後の評価にギャップがあり、賃金を払い過ぎていると後悔する場合があります。そのため、半年後にはこの賃金の見直しができるようにして採用しなければなりません。

しかし、仕事ができるかどうか以上に重要なのは、我が社の組織風土に合うかどうかです。

会社にはそれぞれの考え方があるでしょう。その考え方に共感するかどうかは、6か月間あれば十分判断できます。そして会社の考え方に共感しているかどうかは、社員の行動で判断することになります。

それが勤務態度の遵守です。組織風土に基づいた具体的な社員の行動、守ってもらうべき態度です。

この態度が守れるかどうかがとても重要であることに気がついている会社はあまりありません。つまり、成果を上げる仕事はできても、勤務態度を守らない社員がいます。

「協調性がない」や「責任感がない」といった、我が社の社員としてふさわしくない状況があったとすれば、それはこの会社で定着する可能性は低いことを知らなければなりません。

なぜなら、日本企業の場合は基本的に一般階層で優秀な社員を次の中堅階層にステップアップさせ、部下育成の仕事をしてもらうことを期待しています。

勤務態度が悪い社員を上司にすることはできないでしょう。上司が最初に取り組む仕事は部下の勤務態度を守らせることだからです。例えば「遅刻をしない」「仲良く仕事をする」「困っている人を助けてあげる」ができていない上司が、その勤務態度を部下に指導することはできません。

つまり、中堅階層にステップアップする社員は勤務態度を守っていなければならないのです。そのため、中途採用で成果の高い優秀な社員を採用する場合でも、必ずこの勤務態度が守れることを採用の条件にしなければならないのです。

今すぐこの会社全体の業績向上に貢献してもらいたい気持ちは経営者の中にあるかもしれません。

しかし、結局定着しないような社員を採用してしまえば、指導した努力が全て無駄になってしまいます。この繰り返しをしてはならないでしょう。

成果を上げられる以上に、必ず採用する時に我が社の勤務態度が守れるかどうか判断することが大事です。一度我が社の勤務態度を確認してみてください。難しいことは一つもないはずです。小学校・中学校・高校レベルの守るべきことしか書いてありません。

勤務態度の内容は企業によって若干違いはありますが、どれも難しく理解できないものではないでしょう。我が社の勤務態度を大事だと思って守れるかどうか。たったそれだけです。

高い成果を上げられるかどうかだけでなく、勤務態度が守れる社員を中途採用しているでしょうか?


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