株式会社ビット様(切削工具・耐磨耗工具の設計・製作・販売等 群馬県)

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株式会社ビット様(切削工具・耐磨耗工具の設計・製作・販売等 群馬県)


処遇(昇給・賞与)の納得感と働くモチベーションを高めること、そして「一生懸命に仕事をしている人の志を尊重する会社にしたい」という想いから、成長塾で人事制度づくりを学ばれた株式会社ビット 代表取締役 柳沢 哲也氏に、その経緯と効果について詳しく伺いました。

●会社プロフィール
会社名:株式会社ビット
所在地:〒370-2322 群馬県富岡市岩染343
代表者:代表取締役 柳沢 哲也
資本金:3,000万円
設立:1965年5月
社員数:32名
事業内容:切削工具・耐磨耗工具の設計・製作・販売 精密部品の切削・研磨加工
URLhttps://biteway.jp/

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1.工業用特殊刃物の専門メーカー

――ビットの会社概要をお聞かせください。

当社は工業用特殊刃物を製作・販売している会社で、1959年11月に私の父が創業しました。当初は鍛造バイトや付刃バイトのJIS標準品を製造していましたが、その後、超硬ロウ付けバイト、特殊総型バイト、特殊スローアウェイチップ、耐磨耗工具、切断刃・精密刃物など、多種多様な製品づくりを展開。「高品質」「複雑形状」「長寿命」を軸とした〝きれもの“工具の設計・開発をする工業用特殊刃物の専門メーカーとして大きく成長しました。現在は3万種以上ものオリジナル特殊工具の製造実績に基づき、お客様のご要望に合わせた最適な工具を提案しています。

――コーポレートサイトとは別に立ち上げている「特殊超硬バイト 開発ラボ」は、どういう役割を持つサイトでしょうか。

2021年9月末にオープンした「特殊超硬バイト 開発ラボ」は、刃物や工具で困っている人の役に立つために、そして我々が作っている工具を使用した人の生の声を聞くために立ち上げました。

株式会社ビット様外観
緑溢れる群馬県富岡市で工業用特殊刃物を製造

顧客のニーズを直接聞くことは、自分たちの技術をさらに高めることにつながります。まだまだ立ち上げたばかりですし、当社の生産体制も追いついていない状況ではありますが、今後も技術力をあげていき、問い合わせを増やしていきたいと考えています。

――柳沢社長の経歴をお聞かせください。

ビットに入社したのは1991年、26歳のときです。入社前の3年間は切削工具づくりのノウハウを学ぶため、川崎の工具製造会社にお世話になっていました。ビットに入社後は、15年ほど現場でしっかり鍛えられました。職人としても一人前となった頃、2006年に代表取締役に就任しました。

2.求めたのは業務を可視化し、処遇(昇給・賞与)に反映できる仕組み

――成長塾を受講された背景をお聞かせください。

昇給の説明ができないことがきっかけでした。先代の父は、松本先生いわく「鉛筆なめなめ」で従業員の昇給を決める職人気質の町工場社長。昇給額に納得がいかない従業員は、父ではなく私のところにきて「もっと上げてほしい」と直談判してくることが度々ありました。当時の私に昇給を決める権限がないのはもちろんですが、何よりも父の頭のなかにあるロジックで算出される昇給額を説明することができず、いつも途方に暮れていました。

そもそも「鉛筆なめなめ」は父の主観によるもので、従業員の働きを定量的に見極めて算出したわけではありません。どんなに本人が頑張ったと思っても、給与に反映されないこともあれば、客観的に見て頑張っていない人の方が高い給与をもらっていることも珍しくありませんでした。

そうした処遇(昇給・賞与)は、従業員のモチベーションの低下につながっていきます。どんなに頑張っても正当に評価されないのであれば、やってもやらなくても同じ。適当にやっていればいいという雰囲気が社内に漂うようになっていたと思います。

製品生産現場
多品種少量生産の現場では、日々異なる製品を生産しています

私も現場で鍛えられてきましたから、従業員の不満は理解できます。だからこそ、「一生懸命に仕事をしている人の志を尊重する会社にしたい」という想いがありました。その想いが高じ、考えるようになったのが人事制度の構築です。業務とスキルを可視化し、それが処遇(昇給・賞与)に反映される仕組みづくりが大事だと考えるようになりました。

3.賃金テーブルは作成できたが、業務の可視化にはたどり着けない

――成長塾以外で人事制度の構築に向けた取り組みなどは行いましたか。

まず、2010年に公益財団法人日本生産性本部の群馬県生産性本部にて賃金制度セミナーを受講し、新たな賃金テーブルを作成しました。号俸制度まで導入し、それなりに制度化はできましたが、肝心の業務の可視化まではたどり着けませんでした。実は同年、群馬中小企業家同友会の特別例会で松本先生の話を伺う機会もありました。そのときは、成長塾を受講する勇気がなく、検討だけさせていただきました。

その後2015年、ある方に紹介された別の人事制度の本に共感し、その本をもとに人事制度をつくる決意をしました。幹部従業員にも本を配布して一緒につくっていこうとやる気満々でしたが、すぐに行き詰ってしまいました。結局、成長塾でいう成長シート、これがつくれませんでした。どの業務をどのレベルで定義すればいいのかに悩み、評価の仕方も分かりませんでした。

4.工場見学会で人事制度の仕組みを深く知る

――成長塾の受講に至ったきっかけをお聞かせください。

遅々として人事制度の構築が進まないなか、2016年に日本経営合理化協会のセミナーで再度松本先生の話を伺う機会を得ました。そのとき、松本先生と名刺交換をさせていただき、「群馬県でしたら、群協製作所で開催される工場見学会にお越しください」とお誘いを受け、参加しました。群協製作所の遠山社長のお話、松本先生のお話、そして群協製作所の工場見学をさせていただき、実際の人事制度の仕組みを深く知ることができました。これをきっかけに、2016年143期生として成長塾を受講させていただきました。

5.3年間の仮運用を経て2020年4月から本運用をスタート

――受講後の運用状況をお聞かせください。

成長塾で成長シートの作り方を理解したつもりでしたが、良いものをつくりたい気持ちが先行してしまい、かなり時間がかかってしまいました。ある程度、運用できる形になったのは受講してから半年後でした。

仮運用をスタートさせたのは2017年です。作成した成長シートは製造部と管理部の2部門で、一般階層の従業員のみを対象にしました。成長シートをもとに上司が①評価 → ②成長支援会議 → ③フィードバックという流れも2017年から始めました。成長シートのブラッシュアップ、成長過程を職種や役職で示したステップアップ制度の整備などを行っていたら、結果的に3年かかった次第です。

高い品質が求められる製品にはチームワークで対応
高い品質が求められる製品にはチームワークで対応

本運用は2020年4月からスタートしました。これまでの賃金テーブルは白紙にして、成長シートの評価をベースにしたまったく新しい賃金テーブルでスタート。評価と処遇(昇給・賞与)がリンクする人事制制度の仕組みが完成しましたが、ようやくスタートラインに立ったという状況です。これから5年間ぐらい人事制度を運用し続けると、その効果も見えてくると考えています。

6.人事制度導入後、定着率100%を達成

――人事制度導入後の定量的効果をお聞かせください。

2015年10月~2016年9月をBefore、2021年10月~2022年9月をAfterとし、成長塾受講前後を比較した定量的効果を以下に示しました。おかげさまで、売上高、粗利益、粗利益率などが大幅に伸び、人時生産性も向上しました。成長塾受講後は顧客と従業員が増加しており、それがこの数字に表れている部分もありますが、少なからず、人事制度の導入が業績向上に寄与していると思っています。ただ、先ほども申し上げた通り、本運用が始まったばかりですから、大きな効果が出るのはこれからだととても楽しみです。


人事制度の導入で大きく変化したのは定着率です。これは確実に良くなっています。2015年10月~2016年9月の定着率は85%とありますが、それ以前は5人退職し7人採用した年もありました。人事制度の導入後の2021年10月~2022年9月は、一人も退職者がいません。実際、工場の雰囲気が変わり、従業員が落ち着いて仕事をしているという印象を受けます。

7.フィードバックがリーダーを育て、定着率を高めている

――人事制度の何が定着率に影響したと考えていますか。

フィードバックを始めた頃から変わってきたと感じています。以前は昇給の際に1回、後は適宜というスタイルで私が面談を行っていました。人事制度導入後は、各部門のリーダーと部下が面談するフィードバックの仕組みを追加。期初で目標を策定し、中間で進捗状況を確認、期末に成長シートをお互いが確認し合うことで、従業員のなかに納得感が生まれるようになったと考えています。実際、フィードバックでしっかりコミュニケーションが取れていますから、従業員の不平不満も聞こえてきません。従業員の日報には、フィードバックへの感謝の言葉が書かれていました。

フィードバックで何より驚いたのは、リーダーが成長したことです。どこを頑張れば給与が上がるかを話し合い、もし足りないところがあったら「俺が教える」というようなフィードバックを行うリーダーが増え、リーダーとしての自覚が促進されていると感じます。そして、リーダーが成長すれば、部下も同様に成長していきます。こうした良い循環が工場内に落ち着いた雰囲気をもたらし、100%の定着率につながったのだと考えています。

8.人事制度を要約した「のびのびすくすく成長支援制度」を作成

――そのほか、人事制度を導入して良かったと思うところはありますか。

以下のようなところでも、人事制度の導入効果を感じています。

<処遇(昇給・賞与)の仕組みをロジカルに説明できる>
成長点数に応じて給与が決定されるわけですから、そのロジカルな説明に従業員も納得しています。しかも、評価を高める方法については、リーダーとのフィードバックでしっかり話し合うことができます。賞与についても説明がとても簡単。あらかじめ設定された全体の賞与予算額をベースに、今期はこの売り上げになればこの賞与になると説明できます。

<社内に規律が生まれている>
人事制度導入前は、社長である私の権限以外は曖昧な部分が多かったと思います。しかし、人事制度導入後は「課長は課長らしく課長の仕事」を、「係長は係長らしく係長の仕事」をするようになりました。成長等級とともに役職がはっきりしたことで、組織力がついてきたと実感しています。

イキイキと働く従業員
「群馬県いきいきGカンパニー」でゴールド認証を受けた当社で、従業員はイキイキと働いています

<内定を出した新卒全員が入社>
2014年から新卒採用を行っており、今年度も4名に内定を通知させていただきました。今回は、その内定者4人全員が入社するとのこと。会社説明会のとき、人事制度の仕組みを分かりやすくまとめた「のびのびすくすく成長支援制度」で、当社の人事制度を説明した効果があったのかもしれません。

9.経営理念を支える人事制度

――人事制度に悩んでいる企業に向けて、御社からアドバイスがあればお願いします。

経営理念に直結するのが人事制度だと考えます。もちろん、経営理念は会社によって異なりますが、どの会社も「社会に貢献したい」「顧客に貢献したい」「従業員を幸せにしたい」などがベースにあるのではないでしょうか。ちなみに当社の経営理念は「きれものづくりで公器となる」です。技術・組織・仕組み・人財をしっかりとつくり上げることを通し、「従業員とその家族の物と心の幸せを追求し、社会に役立ち、必要とされる企業・人財になる!」を目指しています。

こうした経営理念は、会社や従業員の成長なくして実現することができません。では、会社や従業員の成長を促すにはどうすればいいか、それはこの人事制度を導入し、従業員が成長できる環境をつくることです。当社は「一生懸命に仕事をしている人の志を尊重する会社にしたい」という想いから成長塾の人事制度を導入しましたが、結果的に会社や従業員の成長につながることが分かりました。人事制度に悩まれているなら、ぜひ成長塾を受講してください。

――最後に一言お願いします。

日本経済を活性化させるため、松本先生が指導する人事制度がより多くの中小企業に導入されることを願っています。お体をご自愛しつつ、1日でも長く成長塾の壇上に立ってください。引き続きよろしくお願いいたします。

柳沢社長

株式会社ビット様、お忙しい中、貴重なお話をありがとうございました。

※株式会社ビット様のホームページ(https://biteway.jp/)
※取材2023年2月



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