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株式会社セベル・ピコ様(宝飾パーツおよび宝飾品の企画、製造、卸販売 東京都)

2023-01-11 [記事URL]

業績を向上させるため、そして事業承継のため、成長塾で人事制度を構築された株式会社セベル・ピコ 取締役 総務部長 二宮 康人氏に、その経緯と効果について詳しく伺いました。

●会社プロフィール
会社名 株式会社セベル・ピコ
所在地 〒125-0062 東京都葛飾区青戸1-8-2
代表者 代表取締役社長 二宮 朝保
資本金 3,300万円
設立 1973年6月
社員数 約200名(パート・グループ社員を含む)
事業内容 宝飾パーツおよび宝飾品の企画、製造、卸販売
URL http://www.seberu-pico.com/

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1.ジュエリーパーツの企画・デザイン・製造・販売を手掛ける

――セベル・ピコの会社概要をお聞かせください。

葛飾区東立石の東京工場

当社は私の父、二宮 朝保(現、代表取締役社長)が時計やジュエリーを製造している会社から独立し、1973年に設立したジュエリーパーツの企画・製造・販売の会社です。ジュエリーパーツをメイン商材として選択したのは、「一過性のデザインや最先端技術・技術革新に左右されず、時代が進んでも大きく変わることがない普遍的なものだから」と聞いています。

当社の特徴は、品質にこだわりたいという想いから、ジュエリーパーツの企画からデザイン、そして製造から販売に至るまで協力会社や下請けを使わず、すべて内製で行っていることです。「これまでにない使い勝手の良い製品を開発し、世に出していきたい」という想いで、お客様に喜んでいただける商品をつくり続けています。

生産拠点は東京工場ほか、愛媛、フィリピン、タイにもグループ会社の工場があります。東京工場は小規模に生産もしていますが、大半は企画・デザインしたものを形にしてみる試作工場として稼働しています。愛媛では真珠加工もしています。真珠用ネックレスの留め金においては国内シェアが約6割と、真珠が好きな方なら一度は当社のジュエリーパーツに触れたことがあるかもしれません。フィリピンは設備機器を使って量産品を製造する工場、タイは職人の技術力が必要な商品を製造する工場です。

機能性と美しさを兼ね備えたジュエリーパーツ

私が入社したのは2011年4月です。1年目は小売店、2~4年目まではタイ工場、5年目が愛媛工場、6年目からは本社で総務や経理の管理業務という形で本社勤務。製造から販売、管理業務まで一通り経験してきました。

2.事業承継が近づき、人事制度の導入が必須に

――成長塾受講の背景をお聞かせください。

大きな理由は2つあります。ひとつは、コロナ禍の影響でジュエリー業界全体が非常に大きな打撃を受けたことです。バブル崩壊以降、ジュエリー業界全体が30年間ほぼ右肩下がりの状況のなか、コロナ禍が追い打ちをかけ、当社も売り上げに大きな影響が出ました。人事制度の導入は、そうした状況から脱却するための打開策のひとつでした。

もうひとつは、事業承継が近づいてきたことです。現社長の父も75歳になり、事業承継を見据えて組織を見直したところ、とても引き継げる状況ではないことが分かりました。なぜなら、これまで人事制度がなくても経営が成り立っていたのは、起業した父だからこその経験と知識があったからです。その経験と知識はすべて父の頭のなかにしかなく、当然、可視化もされていません。さらに、グループ会社を含めて従業員数が多い現在は、父でさえ四苦八苦しているほどでしたから、私にできるはずがありません。そんなとき、父からすすめられたのが松本先生の成長塾でした。

――なぜ、現社長のお父様は成長塾をすすめてきたのですか。

2005年6月に父は成長塾を受講した経験がありました。当時、成長塾で学んだ人事制度を導入したかったようですが、どうしても業務が忙しく、導入までには至らなかったと聞いています。

――成長塾の人事制度について、どう思われましたか。

職人の技が美しいジュエリーパーツを生み出します

成長塾について私自身、面白そうだと思った反面、半信半疑だったのも否めませんでした。というのも約10年前、他のコンサルティング会社の人事制度導入を試みて失敗した経験が頭をよぎったからです。

当時、紹介されたコンサルタントと一緒に人事制度づくりを試みましたが、その制度は事業が成長していく前提だったため、当社には合いませんでした。要するに成果が上がれば給与が上がり、成果が下がれば給与も下がるという制度。右肩下がりのジュエリー業界に当てはめると、従業員の給与は下がる一方になってしまいます。結果、運用までには至りませんでした。

そういった経験を踏まえつつ、父が受講した成長塾の資料を見ましたが、「理屈としては分かるけど・・・」という考えが拭いきれませんでした。とはいえ、百聞は一見に如かずの気持ちで2022年1月に成長塾を受講しました。

3.現実的に導入できる、頑張る価値がある人事制度

――実際に受講した感想はいかがでしたか。

率直に「すごい制度」と感じました。前述の失敗した人事制度や、巷の人事制度の本などは、いずれも人・物・金・時間のどれかが必要なため、とても導入はできないと思っていました。これに対し、成長塾の人事制度は、経営者の想いを可視化して仕組みにすることが他とは異なります。「現実的に導入できる、頑張る価値がある」と考えることができました。

――実際に人事制度は運用されていますか。

地域の展示会に出展し、アクセサリーを展示・販売

2022年5月1日から3か月ごと、対象者別(本社所属の従業員)に仮運用を始めました。最初は幹部を対象に7月まで実施。次に8~11月の期間から中堅従業員を含め、そして11月~2023年1月の期間からは一般の若手従業員まで含めて実施しています。この3サイクルが終われば、本社の全従業員に成長シートを適用したことになります。

11月の半ばからは、成長シートとリンクした新賃金制度に移行する予定です。それが従業員に反映されるのは、昇給のタイミングとなる来春。その状況次第で仮運用を続けるか、本運用に移行するかになると思います。

4.一人ひとりに合った成長シートを作成

――成長シートをつくるうえで苦労はされましたか。

業務が多岐にわたることに加え、同じ仕事をしている従業員が一人もいない独自の業務体制のため、成長シートづくりは本当に苦労しました。私自身、工場の仕事をあまり理解していなかったことも苦労した点です。近年は事務作業に付きっきりで工場に行く機会がなかったため、まずは現場を理解することに時間を費やしました。その後、社長・経営幹部と相談しながら、従業員一人ひとりに対して今何をやっていて、今後は何をしてほしいのかなどを何度も検討。最終的には従業員それぞれに合ったオリジナルの成長シートを作成するところに行きつきました。

――その仮運用中のなかで、定量的成果を得ることはできましたでしょうか。

2021年2月~2022年1月をBefore、2022年2月~2023年1月(見込)をAfterとし、成長塾受講前後を比較した定量的成果を以下に示しました。先ほど申し上げた通り、仮運用は2022年5月からのため、実質のAfterは9カ月ほどとなります。

仮運用であり、運用期間は短いですが、数字は向上しています。なお、この数字は当社単体の売り上げのみで、グループ会社の数字は入っていません。


※株式会社セベル・ピコ単体(ジュエリー事業)クリックで拡大

5.人事制度の導入が事業改革に発展

――人事制度の導入による定性的成果はいかがでしょうか。

これについては、非常に大きな成果を感じており、今後に大きな期待を持っています。以下、具体的な成果を挙げさせていただきます。

<経営層と従業員、お互いの理解度が深まる>

成長シートづくりを通じ、誰が何をやっているかまで完全に把握することができました。私自身、会社全体の理解が深まったと感じています。また、従業員とたくさんの会話をしたことで、人事制度に対する印象は「非常に良いものになった」と幹部従業員から聞いています。とくに私と歳が近い若い従業員は、かなり期待感が高まったようです。

<コミュニケーションの増加>

フィードバックを増やしたことで、社内のコミュニケーションがスムーズになったと感じています。具体的なフィードバック数については、直近3回目の仮運用、若手従業員の場合を例にお話しします。まず10月の末、11月からの成長シートの説明を行いました。次に、12月中頃に中間の確認とフィードバックを行い、そして評価期間終了後に最終フィードバックを実施する予定です。このように、一人につき3回のフィードバックを私と対象者の直属の上司で行います。

正直、時間のやり繰りには苦労しますが、フィードバックの優先度は高く設定しています。なぜなら、現場の声をリアルに聞くことができる機会だからです。従業員がやりたいこと、会社に期待すること、会社への不満など、従業員が考えているさまざまなことを聞くことができます。社内の情報が私のところに集約されてきますから、後は私の行動次第。例えば、従業員から他部門が関係する話を聞くことがあれば、私がパイプ役となって理解と連携を深める動きを行うことが可能。上手くいけば、部門間のコミュニケーションがスムーズになります。

しかも、成長シート自体、従業員同士のコミュニケーションを推奨する内容になっています。実際、従業員同士、積極的にコミュニケーションを取る動きが見られるようになりました。

<マニュアルで技術の共有を図る>

工場特有の職人気質があったため、これまで仕事は「見て覚える」が基本。人に教えるという文化はありませんでした。しかし、それでは従業員が技術を習得するまで時間がかかります。当然、経営面にも悪い影響がでます。今回、人事制度を導入するにあたり、「マニュアルをつくるなど、積極的に技術を教え情報を共有する姿勢が、成長基準における最高評価につながる」とフィードバックの都度、従業員に伝えていました。この効果があったのか、実際にマニュアルを見かけるようになりました。非常に良い方向に行っていると感じていますので、さらなる情報共有に期待しています。

<人事制度の導入から目標設定が始まる>

目標を立てて業務にのぞむ体制を構築できたこと、これがもっとも大きな成果だと考えています。実は右肩下がりの業界ということもあり、長年、目標がないなかで業務を続けていました。目標設定を考えたこともありましたが、達成できない目標を掲げることで従業員のモチベーションを下げることにならないかと、慎重になっていました。

しかし、今回の人事制度は目標設定に役立ちました。まず、松本先生がおっしゃっているように「この人事制度は従業員を評価するものではなく、従業員の成長を支援し会社も一緒に成長していくためのもの」と伝えたことで、大きな反発もなく人事制度を導入することができました。そして、人事制度を導入すると、成長するためには何らかの目標設定が必要だと認識するようになります。順番としては逆かもしれませんが、結果的に人事制度が目標設定を行う体制を築いてくれました。

それだけではありません。目標設定をしたら今度は目標達成のため、リーダーをつくってプロジェクト化するところにつながっていきます。さらに、プロジェクトを成功させるための会議や進捗報告など、人事制度の導入から始まって逆算的にさまざまな業務活動が行われるようになりました。この状況は業務改革のBPR(Business Process Re-engineering)という言葉が当てはまるかもしれません。入社以来、初めて「会社が大きく変わり始めている」と感じています。

6.グループ会社への導入にも着手する予定

――今後の展開をお聞かせください。

売り上げをコロナ禍前に戻す、その次はかつての全盛期まで戻す、その先はそれを超えていくことが会社全体の大きな目標です。もちろん、簡単なことではありませんが、目標に向かって取り組む姿勢を大切にしつつ、当社の状況、日本の市場、世界の市場を踏まえ、売り上げ目標を達成するには何をすればいいのか、その具体策を十数年ぶりの経営計画書にまとめています。

さらに、人事制度においてやるべきことは、グループ会社への導入です。国内のグループ会社への導入は難しくないと思いますが、海外のグループ会社は人の気質も違えば法律も違うため、そのまま移行することは難しいと考えています。まずは、現地の幹部と相談したいと思っています。

7.人事制度を形にすることで会社が動き出す

――人事制度に悩んでいる企業に向けて、御社からアドバイスがあればお願いします。

人事制度がない、あるいは人事制度をつくったことがない中小企業の方々に、ぜひ成長塾の受講をおすすめします。まず、経営者の想いを可視化して仕組みにすることが大事で、仕組みにするところまでは、松本先生からサポートを受けることができます。仕組みになれば、そこからさまざまものが動き出します。それは決して当社だけではないと思います。

――最後に一言お願いします。

松本先生の人事制度は机上の空論ではありません。ご自身の成功と失敗、苦労を糧につくり上げられた人事制度です。だからこそ、どの会社でも運用することができます。私自身、出会えて本当に良かったと思っています。まだまだ、勉強することばかりですので、引き続きよろしくお願いいたします。

株式会社セベル・ピコ様、お忙しい中、貴重なお話をありがとうございました。

※株式会社セベル・ピコ様のホームページ(http://www.seberu-pico.com/)
※取材2022年11月


第141話 激動の時代には中小企業に利がある

2023-01-10 [記事URL]

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激動の一年の幕開けです。今年は経営環境がどう変化するか分かりません。誰もこの環境を経験したことがありませんから、2023年の正確なかじ取りは分からないといったところが正直な意見でしょう。

常に現場は変化しています。顧客ニーズがどんどん変わっています。それに一部の社員は間違いなく対応しています。なぜなら、変化に対応している社員は成果を上げているからです。

その対応の仕方を可視化することが必要です。そしてそれを全社員で共有化してください。つまり、この環境に全社員で適応するのです。

この環境適応のスピードは、当然中小企業の方が早いでしょう。中小企業は断然に有利です。ただし、環境に適応している社員の評価と処遇を一致させることを忘れないでください。

そして、チャレンジすることを大いに推奨してもらいたいと思います。チャレンジには必ず失敗を伴います。成功の確率は良くて3割です。チャレンジに失敗したときマイナス評価されてしまえば、結局社員はチャレンジすることをためらってしまいます。

社員の行動を一番左右するのは会社の評価です。ほとんどの場合、社長の「どうして当社の社員は…」の嘆きは評価に原因があります。どんなに失敗してもマイナス評価しない仕組みをつくってください。チャレンジするときは「チャレンジする」と必ず社員に宣言してもらって、誰がどのようなチャレンジをしているか組織全体で分かるようにすることです。

マイナス評価をしている会社では、社員が内緒でチャレンジしています。このチャレンジも組織内に可視化することです。

2022年は環境に適応した企業が躍進を続けました。私の周りでも中小企業が一気にその環境に適応して、かつてないほど業績を上げました。今年もこの激変する環境に適応して躍進していきましょう。

そのような情報を今年もお届けしたいと思います。今年もよろしくお願いします。


第140話 社員の賞与額が説明できないリスクは大きい

2022-12-20 [記事URL]

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賞与を相対評価で決めることはできません。経営者は賞与を決めるとき、社員によって金額を変えています。その金額の違いの根拠は実は相対評価です。ところが賞与支給時に相対評価で賞与を決めていると社員が分かってしまうと、社員は自分は他の社員よりたくさんもらいたい気持ちが生まれてしまいます。それが普通でしょう。

相対評価によって自分がたくさんもらうためには、自分だけ高い評価を得たいと考えるようになります。これを「自利」と表現することができるかもしれません。いわゆる利己主義です。

日本の経営者の場合、現場(一般階層)で優秀だったら中堅階層へステップさせようと思っています。しかし、一般階層の段階で自分さえ良ければいいと考える社員が中堅階層で活躍するイメージは全くないでしょう。中堅階層は「自利」+「利他」の階層です。部下を成長させる(利他)業務につきます。

そのため、この賞与を決めるときには社員の評価方法を「絶対評価」に切り替える必要があります。

全ての会社に組織原則2:6:2があります。優秀な社員が2割、まあまあの社員が6割、これから成長する社員が2割います。そのため、日本中全ての経営者がこの2:6:2通りに賞与額を決めています。

今、これから成果を上げる下の2割の社員について、経営者はこう考えていることでしょう。「一生懸命指導を受けてしっかり成長し高い成果を上げてもらいたい」。つまり、成長してもらうことで最終的に何年後かに我が社の優秀な社員(上の2割)に成長し、高い賞与を支給したいと考えているのです。

賞与金額の違いを「差をつけている」と言う人がいますが、差をつけられて嬉しい顔をする人は上の2割だけです。残りの8割は当然嫌な顔をすることになるでしょう。同じ組織の中で社員がこのような感情を生んではいけないのです。このままでは、組織は一丸となれません。

日本では、戦後高度成長期に相対評価によって賞与を決めることが一般的であったことも事実です。しかし、この低成長時代、場合によっては全く成長しない時代に、相対評価で賞与を決めるようになったらどうでしょう? 社員一丸となって生き抜かなければならない時代に、社員が一丸にならなかったら、会社の存続・発展が難しいことは、火を見るよりも明らかです。

そのため、社員の成長によって評価を決める、「絶対評価」によって決める仕組みに変えなければならない時代になりました。全ての会社には80点取れる社員がいます。60点取れる社員もいます。40点の社員もいるでしょう。この点数によって賞与が違いますが、決して差をつけて40点の社員を少ない賞与にしているわけではないのです。

40点の社員も60点になって欲しい、そしてその60点にふさわしい賞与を支給したい。そして最終的に80点になったらもっと賞与を増やしてあげたい。このことが説明できる会社にならなければなりません。それによって全ての社員が一緒に成長する組織をつくることができます。これはとりもなおさず会社の業績が良くなることを意味します。

経営者はもともと社員が成長して業績が良くなったら賞与たくさん出してあげたいと考えています。賞与を増やす最も大事な方法は、全社員の成長により会社全体の業績が良くなることです。このことを社員にしっかり教育していますか?


第139話 経営者の一番大切な仕事が、一番社員に理解されていない仕事

2022-12-13 [記事URL]

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経営者の仕事で一番社員に理解されない仕事、それは意外だと思いますが、なんと昇給・賞与の決定なのです。

いよいよ賞与支給の時期になりました。社員を大切に育てている経営者は悩みに悩み抜いて賞与額を決めているでしょう。

賞与を決める時の経営者のこの悩みは、たった二つです。(A)賞与合計額をいくらにするか、そして(B)社員一人一人の賞与額をいくらにするか。この二つです。場合によっては1か月間もその金額決定に悩んでいる経営者がいます。それは取りも直さず社員に1円でも多く賞与を支給してあげたいと経営者の想いの表れといえるでしょう。

しかし、この仕事が大変だと理解してくれる社員はいません。そしてこの経営者が悩んでいること自体が大きな問題を発生させていることに経営者自身気がついていないでしょう。それは考えれば考えるほど社員に説明できない賞与になることです。あれほど苦しんで決めた賞与が理解されないのです。万が一、社員が賞与の金額の根拠を聞きに来たら困ります。

例えば、 Aさんの賞与が30万円、Bさんの賞与が25万円だったとします。 AさんとBさんが賞与支給日に、その賞与の明細を見せ合うと、Bさんが疑問に思い、経営者に質問することになるでしょう。
「なぜ私はAさんと比べて5万円少ないのですか?」
経営者はしっかりと考えて賞与の金額を決めたとしても、その金額の根拠が説明できません。その結果、Bさんに対する説明は次のようになります。

「BさんよりAさんが多いのはAさんの方が優秀だから」

社員にとって他の社員と比べられることが最も嫌であることを知って頂く必要性はありますが、今回BさんはAさんと比べられて「優秀ではない」とBさんは経営者の口から直接聞かされました。

世の中には状況によって賞与を支給できない会社もあります。しかし、25万円賞与をもらったBさんは、社長の説明を聞いた時からモチベーションが一気に落ちていきます。正しく説明できないことが、これほど大きな問題を起こしていることに経営者はあまり気が付いていません。

少し考えれば分かることですが賞与額を決めることはすべて計算式にすることができます。

(A)全体的な賞与の金額をいくらにするのか、そして(B)個人の賞与をいくらにするのか。賞与を決める経営者の考え方は全て計算式にすることができます。

そしてこの計算式を見た時に、初めて社員は経営者の想いを知ることになります。それは「この会社の業績が良く、社員が成長したら賞与を増やしたい」想いです。この想いを簡単な計算式で社員に説明することができます。そして計算式を示すことによって社員は誰一人としてその金額の根拠を聞くことがなくなります。つまり、賞与を支給する日に誰もモチベーションを落とすことがなくなります。経営者も質問がなくなったことによって気が楽になるでしょう。

毎年毎年の賞与を決める仕事は、経営者の大切な仕事です。その賞与を計算する仕組みはあるでしょうか? それは社員にオープンにしているでしょうか? そして社員からの質問はなくなっているでしょうか?


第138話 インフレ手当を支給する企業が増えた今、やるべきことがある

2022-12-06 [記事URL]

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最近の物価高に対する企業の対策は、インフレ手当を出したり、臨時でベースアップをしたりすることです。中小企業でもこの物価高にしっかりとした対応をしていくことが必要になりました。

そもそも、賃金を増やすことよりも大事なことがあります。それは、賃金を増やすにはどうしたらよいかを社員に教育することが先であることです。

賞与原資・昇給原資は、売り上げや粗利が増えなければ増えません。この教育ができていない企業が多いようです。

経営者は、この物価高の生活環境の中で賃金を上げてあげたい気持ちは十分にあるでしょう。そのためにどうしたら賃金が増えるか社員に教育することが必要です。つまり、売り上げ、粗利益を増やすにはどうしたらよいかを社員に教育することが今求められています。

売り上げや粗利益を増やすためには、この経営環境に適応した社員へと成長することが求められます。どのような経営環境でも売り上げや粗利益を上げている社員はいます。それは組織原則2:6:2で示すことができるでしょう。その高い成果を上げている2割の社員の優れたやり方を、スピーディに、全社員に教育をすることが大きなポイントになります。

そして業績が向上することで、昇給原資、賞与原資がいくら増えるのか具体的な金額で社員に事前に分かりやすく説明しなければなりません。

通常、賃金制度を見れば自分の賃金がいくら増えるのか分からなければなりません。
「自分はたくさん賃金をもらえるよう頑張ろう!」
しかし、これだけではお互いに教え合う組織風土をつくることはできません。

大事なことは、業績によって個人ではなく全社員の昇給原資や賞与原資がどうなるかを示すことです。この原資が増えることによって、全ての社員の昇給・賞与が増えることになりますので、誰も困る社員はいません。

そしてこの昇給・賞与の原資の増減が、例えば賞与なら半年後、昇給なら1年後支給するときに分かるのでは遅すぎます。この原資の増減は毎月毎月社員に分かるようにしなければなりません。

そしてこの毎月の業績で一喜一憂するのが経営者や幹部だけでは、到底業績を向上させることができません。この業績は社員が過去1か月間のマーケットで得た満足度を示した数字です。そうであれば、一番関心を持たなければならないのは現場にいる一般階層の社員と言わざるを得ないでしょう。

一般階層の社員まで含めた全ての社員が、毎月毎月その業績結果を見ることによって一喜一憂する。つまり、自分の1か月間を振り返ることができていなければなりません。

それによって社員は毎月業績を高めるための行動を取ろうとしますが、その際大きなヒントになるのは「高い成果を上げている我が社の社員が何をしているか」です。

そして実際に高い成果を上げている社員は、成果の上がっていない社員に教えることができるようにならなければなりません。教えた社員が最も昇給・賞与が多い。このことに反対する社員は過去40年間で一人もいませんでした。

今こそ、全ての社員に業績に関心を持ってもらい、賃金を上げるにはどうしたらよいか、しっかりと社員教育をするときが来たと言えるでしょう。

その教育はしていますか?


第137話 65歳以上の社員の納得できる賃金の決め方

2022-11-29 [記事URL]

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日本の中小企業では、65歳を過ぎた社員の雇用がますます増えています。それは年金だけで生活するのは難しい現実があることが一つの要因でしょう。

もっとも、どの会社でも65歳以上で働いている社員は皆元気です。
「元気だから働いている」
「働いているから元気である」
どちらにしても働いている本人も良いし、会社にとっても良いことに間違いありません。

特に中小企業は常に労働力不足に悩まされています。そのため、65歳以上の社員が元気で働けるのであれば、継続して働いてもらうことはとてもいいことでしょう。

ただしここで問題になってくるのが、65歳以上の社員の賃金の決め方です。通常、中小企業は大手企業の人事制度の実践事例を見ながら自社の人事制度を検討することが一般的ですが、65歳以上の雇用に関しては大手企業の実例は数えるほどしかありません。そのため中小企業は独自で検討しなければなりません。

この65歳以上の社員の賃金を決めるためには、三つのことを考えなければなりません。

一つ目は働き方が変わるかどうかです。
働き方には「総合職」と「一般職」があります。総合職は職種も勤務地も限定しない働き方であり、一般職の場合には職種限定だったり、勤務地限定だったり、時間や日数限定だったりという働き方です。

元気であれば総合職のまま継続して働くことは可能でしょう。しかしだんだん体力が衰えてくると、職種限定や、勤務地限定の希望が出るでしょう。その時には限定職の賃金にしなければなりません。その賃金の決め方は現在も限定職で働いている社員がいれば、参考にすることができるでしょう。

二つ目は成長シートを独自に作成することです。
日本の中小企業には、部下を育てる「マネジメントコース」と自分で成果を上げる「プロフェッショナルコース」があり、基本的に社員をマネジメントコースで成長させようとしています。

一般階層で優秀であれば中堅階層、中堅階層で優秀であれば管理階層とステップアップさせています。元気であれば役職に就いて仕事をしているかもしれません。年齢的なこともありプロフェッショナルコースで仕事をしたい場合もあるでしょう。

65歳以上はいろいろな環境の変化があり、それに合わせて新たな成長シートを作る必要があります。ここでコースが変わり、仕事の内容が変わるとすれば、新たに作成する成長シートは難易度調整をしなければなりません。成長シートはもともと期待成果の大きさが明記されていますので難易度の調整が比較的容易にできます。

そして三つ目は雇用条件の違いです。働く日数が少なくなったり、働く時間が短くなったり、残業ができなくなったり、早朝や深夜の勤務が出来なくなったりすることを雇用条件の変更として捉えて、それに合わせて雇用条件係数を決め、基本給や成長給に掛けることになるでしょう。これは全て社内にオープンにすることによって、若い人も含めこれから65歳以降、その新しい働き方があり、それに対して賃金がどうなるか明確にすることができます。

65歳以上の社員は自分の将来に不安を持っています。
「雇用条件の変更は認めてもらえるだろうか」
「賃金はどうなるのだろうか」
この社員の不安に応えて、全ての社員にさまざまな働き方が可能であることを示しているでしょうか?


冬期休業のお知らせ(2022年度)

2022-11-24 [記事URL]

弊社では誠に勝手ではございますが、本年度の冬期休業日につきまして、以下の通りとさせていただきます。

◆ 休業期間 2022年 12月27日(火)~2023年 1月4日(水)

【セミナー・研修へお申込みいただいた際】のご請求書の郵送につきましては、以下の通りとなります。

12月19日(月)16時30分までにいただいたお申込みにつきましては、26日(月)までにご請求書を発送いたします。

【ご注文いただいた商品の発送】につきましては、以下の通りとなります。

●お支払方法【代金引換便/払込書】でのお申込
12月19日(月)16時30分までにいただいたご注文につきましては、26日(月)までに発送いたします。
※在庫切れの場合にはその限りではございません。ご了承ください。

●お支払方法【銀行振込】でのお申込
12月19日(月)16時30分までにご入金いただいたご注文につきましては、26日(月)までに発送いたします。

12月19日(月)16時30分以降の商品のご注文・ご入金につきましては、1月5日(木)以降に発送させていただく可能性がございます。

なお、冬期休業中もFAXやEメールによるお問合せは受付けておりますが、12月20日(火)8時以降のお問い合わせ等につきましては、来年1月5日(木)以降に順次対応させていただきます。

大変ご迷惑をおかけいたしますが、ご理解とご協力のほど、よろしくお願いいたします。

ご不明な点等がございましたら、お気軽にお問い合わせください。


第136話 女性社員に活躍してもらうために絶対に必要なこと

2022-11-22 [記事URL]

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現在の日本企業は、管理職を占める女性社員の割合が低いことが問題になっています。主要先進7か国(G7)の中で日本は最下位という結果です。

女性社員を男性社員と同じように成長シートで公平公正に評価し、処遇を決めることは重要なことと言えるでしょう。なぜなら、日本ではこれからさらに労働力不足になりますが、もともと女性の企業での活躍は限られており、十分に力を発揮している状況ではありません。

有能な女性社員の活躍の可能性を閉ざすことは、企業にとっても実にもったいないことです。これからの日本において、女性社員の活躍は企業の発展を左右します。

この女性社員の活躍を促進するためには、企業において二つの仕組みが必要です。

一つは成長シートで男女の区別なく評価する仕組みをつくることです。
処遇は成長シートで算出された成長点数で決めることになります。昇給・賞与・昇進・昇格はすべて成長点数で決めることになり、男女によって違いはありません。

もう一つは雇用条件の違いで賃金を決める仕組みをつくることです。
女性社員の中には結婚し、出産・育児を経て復職する社員もいるでしょう。その復職時に賃金はどう決まるかを明確にしている会社はあまりありません。

まず大事なことは、復職後も成長シートを活用し、成長点数で昇給・賞与、賃金を決めることです。しかし、復職しても家庭の状況によって育児などさまざまな仕事上の制約が発生し、休職前と同じ条件で仕事ができない可能性があります。

例えば、「職種限定にしたい」「勤務地限定にしたい」「短時間で仕事をしたい」「残業ができない」「早朝深夜の業務はできない」など、さまざまな雇用条件を抱えている場合、まったく制約の無い社員と同等の賃金を支給することはできないでしょう。

そのため、この雇用条件の違いを「雇用条件係数(R)」として、現在の賃金に掛け算することが必要になってきます。例えば、フルタイム8時間勤務から7時間勤務に変更したいのであれば、支給する金額は8分の7という計算になります。残業できないという場合は、例えば賃金に「0.9」の雇用条件係数をかけることになるかもしれません。

それぞれの会社の状況によってこの係数は違いますが、雇用条件の種類は企業規模、業種によってそれほど違いはありません。そのため、社内でこの雇用条件と雇用条件係数を全て明らかにして、女性社員の働き方によって雇用条件係数を賃金にかけることを前もって説明しておくことが必要です。

「通常の雇用条件とは違う働き方をする社員は、それぞれの家庭環境によって違いがあり、そしてその違いを会社として受け入れるために雇用条件係数をかけている」と分かれば、働き方が違う社員に対して全社員が「大変ですね!」と理解を示すことができるようになります。

この二つの仕組みをつくることが、女性社員の会社での活躍を大いに促進することになります。

女性社員が出産や育児により一時休職する時に、自分がやがて会社に戻った時にさまざまな雇用条件を受け入れ、そして賃金がどう変わっていくのか説明できる仕組みはあるでしょうか?


第135話 経営者が後継者の選定で今から準備すべきこと

2022-11-15 [記事URL]

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現在、日本の中小企業では後継者問題が大きく取り上げられています。

経営者の年齢的なこともありますが、そろそろ自分も次の世代にバトンタッチして行こうと考えたときに後継者問題にぶち当たります。

例えば5年後に事業承継をしようとした時に「さあこれから誰に事業をバトンタッチするか」と考えることになります。この時までに誰を後継者にしたら良いか、明確に基準をつくっておく必要があるでしょう。

後継者にはなりたくないという社員はいるでしょう。しかし中には後継者として重責を担いたいと考える社員は必ずいます。この後継者になりたい社員の中から選抜することになりますが、後継者をどうやって決めるか曖昧なままでは、その後の経営に問題を発生させることになります。

「どうしてこの人が後継者になったのか?」
この社員の不安、または不平不満です。

このとき管理階層の成長シートがあれば、一言で済んでしまいます。
「現在いる管理階層の社員の中から、この管理階層の成長シートで一番成長点数の高い社員を後継者に任命します」
つまり、一番優秀な人にバトンタッチすることになりますので、社員から不平不満の出ようがありません。

管理階層の成長シートは基本的に経営者をモデルにして作成します。自分が優秀だと評価する社員にバトンタッチすることができれば、経営者自身も安心して事業承継できることになります。

ただし、数年で後継者を決めることはあまりにも難易度が高すぎると言えるでしょう。また、社員も突然後継者指名をされると戸惑いを隠せません。後継者を選ぶのは何十年もかける必要あるでしょう。社員には「後継者になるためには何十年もかけて計画・指導していくこと」を事前に知ってもらうことになります。

社員が入社する際、一般階層・中堅階層・管理階層を一つひとつステップアップしていき、管理階層の社員の中で優秀な社員が次の後継者になることを説明することが必要です。

大手企業と違って中小企業の場合、これから徐々に事業規模を拡大するために役職定年制度をつくる必要はありません。そして全ての社員が成長することで規模拡大につながりますので、誰かを振り落とさない限り上に昇進できないこともありません。

後継者はこの仕組み(ステップアップ制度)を活用して30年~40年かけて決めることになるでしょう。これによって経営者も冷静にその後継者の選定をすることができます。社員もいつかは経営者になる可能性があることを考えながら仕事をし、成長していくことになります。

後継者問題は経営者が次を指名するというだけの問題ではなく、指名される社員の心の準備を考える必要があります。それは事業承継のみならず、事業承継した後の会社の成長・発展を揺るぎないものにする計画となるでしょう。

後継者を任命するための仕組みはつくってあるでしょうか?


株式会社カネコ様(特殊ネジ、リベットの製造等 千葉県)

2022-11-10 [記事URL]

「」氏

従業員の誰もが納得する昇給・賞与を決定する仕組みをつくるため、成長塾で人事制度づくりを学ばれた株式会社カネコ 代表取締役社長 金子雅一 氏に、その経緯と効果について詳しく伺いました。

●会社プロフィール
会社名 :株式会社カネコ
代表者 :代表取締役社長 金子 雅一
従業員数:34名(正従業員25名、パート9名)
所在地 :千葉県浦安市千鳥15-37
事業内容:特殊ネジ、リベットの製造、冷間圧造部品の二次加工、
カム式旋盤のアフターサービス
URL
コーポレートサイト: http://www.e-neji.co.jp/
特殊ネジ・リベット製造.com: https://www.fastener-parts.com/

 

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1.特殊ネジ・特殊リベットの製造・販売を手掛ける

――株式会社カネコの会社概要をお聞かせください。

カネコ様_製造中の写真
卓越した技術と設備でニーズに応えています

当社は創業以来60年以上に渡って、冷間圧造(金属の塑性を活かし、圧力を加えて変形させる成形技術)部品の切削二次加工などに携わってきました。そのほとんどは特殊ネジ・特殊リベットの製造・販売で、ネジやリベットのメーカーに対して「穴を開ける」「溝をつける」といった切削二次加工のサービスを提供しています。用途としては自動車関係が多く、そのほか建築、弱電、医療など、さまざま領域のネジやリベットの切削二次加工を行っています。

創業は私の祖父で、二代目は父、私は2015年に三代目として代表取締役社長に就任しました。私自身は大学を卒業後、大手の機械要素部品メーカーに入社して、営業職に携わりながら家業につながる製造業界の知識や技術を習得。さらに、その会社では「モノを売ることがゴールではなく、お客様の困りごとを解決すること」を徹底的に叩き込まれました。この経験を経てネジ業界に入ったわけですが、ちょっとしたカルチャーショックを覚えました。

カネコ様_製造部品の写真
冷間圧造(ヘッダー)+二次加工で完成品としても納品が可能

そもそもネジ自体、世の中に登場してから姿形が変わっていないこともあって、生産や取引形態にイノベーションが起きにくいという特色があります。それを踏まえつつ、あくまでも私見ですが、自ら積極的にアクションを起こす業界ではないと感じました。当社には、下請けだけでは存続できない危機感がありますから、それなら自らお客様に向けて積極的にアピールしてもいいのではと考え、数年前に「特殊ネジ・リベット製造.com」を立ち上げました。

「特殊ネジ・リベット製造.com」は、完成品をワンストップで製造・販売するメーカーのスタンスを取り入れた特殊ネジ・リベットのオーダーメイドサイトです。これまで、数十年間20~30社の取引会社で続けてきましたが、「特殊ネジ・リベット製造.com」を立ち上げてからは、取引社数は約200社へと大幅に増えました。売り上げに関しても、切削二次加工のサービスが約7割、「特殊ネジ・リベット製造.com」が約3割のところまできました。

ビジネスモデルは変化しても、お客様の要求に応えるため、高品質・低コスト・短納期での安定した供給を目指し、日々挑戦し続けていくことに変わりはありません。引き続き、ご愛顧いただけますと幸いです。

2.賞与・査定において従業員が納得する仕組みづくりが必要

――成長塾を受講した背景をお聞かせください。

2つの課題がありました。ひとつは賞与の決め方です。前職の経験やビジネス書籍の知識および知り合いの話などを参考に自分なりのやり方で賞与を算出。自分ではその数字に自信がありました。ところが直訴はありませんでしたが、不満を持つ従業員が少なからずいたようです。不満げな空気感や、回り巡って不満の声が耳に入ってくるような状況でした。

私も説明したいところですが、すべては私の頭の中で算出していますから、なかなか納得してもらえる説明の仕方が思いつきませんでした。やはり、頭の中を可視化して仕組みにする必要があると常々感じていました。

カネコ様_機会を操作して製造している様子
実際に製品をつくる加工現場

もうひとつは、従業員の能力・技量を確認する方法です。そもそも当社が採用する従業員は中途採用がほとんど。しかも、工業高校や理系大学出身者、あるいは製造業の経験がある人を優先して採用していますから、即戦力とは言わないまでも、ある程度の成果を期待しています。ところが本人の頑張りと私の期待にギャップがあり、納得する評価を与えることができませんでした。私の厳しい評価に辞めてしまう従業員もいました。今となっては同じ製造業で括るのは早計だと分かりますが、当時は私も未熟だったため、成果を求め過ぎていました。辞めていった従業員には申し訳なく思っています。

評価と処遇(昇給・賞与)に関してお互いに納得する仕組みがない限り、この2つの課題は解決できないと考え、人事制度の構築を決意しました。

3.従業員を成長させる人事制度に感銘

――成長塾と出会ったきっかけをお聞かせください。

成長塾を受講する前、他社の専門家と一緒に当社に合った制度づくりに取り組んだことがあります。等級制度を設計し、具体的に説明できることを期待して、定期的に打ち合わせを続けていましたが、その専門家の知識だけでは終わりが見えてきませんでした。

書籍『社員が成長し業績が向上する人事制度』何か良い人事制度がないかと模索していたとき、知り合いの経営者から紹介されたのが松本先生の成長塾でした。こちらも本気でしたから、まずは松本先生が提唱する人事制度のことを知りたいと思い、『社員が成長し業績が向上する人事制度』(日本経営合理化協会出版局)を購入。この本に感銘を受けて、次は松本先生のセミナーを受講させていただきました。

そのセミナーでは、松本先生がおっしゃっていた「賃金も大事だけど、それよりも従業員は成長するところに喜びがある」という言葉に感銘を受けました。しかも、松本先生はそれを人事制度として仕組み化しています。このタイミングで巡り合えたのは運命だと思い、セミナーのあとはすぐに成長塾を受講しました。

――成長塾受講後の進捗状況を教えてください。

最初に受講したのは2019年5月(183期)です。しかし、営業畑の人間が初めて人事を学ぶわけですから簡単ではありません。そこで、2019年8月(185期)に第1・2講座のみをオンラインで受講しました。その後、もう一度対面で2021年9月(202期)に3回目を受講しました。

――受講後、すぐに運用されたのでしょうか。

2019年10月から仮運用を始めました。しかし、現在も人事制度と昇給はリンクしておらず、賞与のみがリンクしている状況です。そういう意味では、「今も仮運用期間」と言えるかもしれません。

「今も仮運用期間」と言ったのは、人事制度をすべて回せてないところにあります。従業員と上司のフィードバックも3カ月周期では実施できていません。半年周期で実施できれば良しとしている状況です。成長支援会議を含め、まずは、計画通りに人事制度のタイムテーブルを回して本運用に移行させるのが目標です。

そもそも人事制度を回せていないのは、工場全体がフル稼働中というのが大きな理由です。工場特有の納期への対応がありますから、そういった案件をいくつも抱えてしまうと設備を止めることができません。

業務優先は仕方ないにしても、こうした状況で人事制度を回せていないのは私自身のマネジメント不足もあると思っています。幸い、従業員は今回の人事制度導入を好意的に捉えていますので、なるべく早く本運用に移行できるようにマネジメントしていきたいと考えてます。

――成長シートはどのように作成されているのでしょうか。

当社の場合、製造部門、品質管理部門、生産管理部門の3つに分けて成長シートをつくっています。中身は「期待成果」のところは少し似てますが、「重要業務」と「知識・技術」は部門で異なるため、しっかり分けています。ちなみに成長シートに関わっているのは、私と5名の幹部スタッフの計6人。成長塾で学んだ知識を幹部に伝授している最中です。

4.人事制度が定着率に貢献

――人事制度導入後の定量的効果をお聞かせください。

仮運用期間ではありますが、人事制度導入後の2019年4月~2020年3月、2020年4月~2021年3月、2021年4月~2022年3月の3年間を比較した定量的効果を以下に示しました。


※クリックで拡大します

直近の2021年4月~2022年3月は、売り上げが大きく伸びているのが分かると思います。これは、コロナ禍が当社にとって追い風となりました。リモートワークにともなう運動不足を解消するため、世界的に自転車の需要が高まり、そのなかで当社は自転車の変速機に必要な部品製作に関わらせていただいております。

現在も多くの受注をいただいており、設備はフル稼働の状況。加えて「特殊ネジ・リベット製造.com」も順調で、月平均30~40件の問い合わせから5社前後ずつ顧客が増えています。こういった状況ですから、なかなか人事制度の運用まで手が回らず、現在も仮運用期間のままとなっています。

それでも、人事制度の成果が上がっていると言えるのは定着率です。人事制度導入後は定着率100%を実現。誰も辞めていません。明らかに会社の雰囲気が変わり、居心地が良くなっていると思います。このまま、企業文化として根付いていくことを期待しています。

5.教える文化が根付き始めている

――雰囲気が変わったことについて、もう少し詳しく具体的にお聞かせください。

以前はニンジンをぶら下げて「頑張れ」とお尻を叩くだけでしたが、人事制度導入後は「賞与原資は粗利の10%」ということを従業員全員に伝えました。当然、粗利が増えれば増えるほど個々の賞与は増えますから、賞与原資を大きくすることが従業員全員の明確な目的意識になりました。

会議で売り上げや粗利の数字を公開しているため、業績への関心も大きく高まっていると感じます。実際、私が言わなくても夜間に設備を無人で動かす設定を行うシーンが多くなりました。夜間に回せば稼働率が向上し、短納期への対応が可能。原価が下がり、利益にもつながります。

このほか、以下の点でも変わったと感じています。

<教える文化>

カネコ様_教え合う様子
現場は従業員同士のコミュニケーションも活発

教えるという文化が根付いてきました。以前までは、「背中を見て覚える」という代々受け継がれてきた日本の職人気質のスタンダードな姿が当社でも見受けられましたが、「やってみせる」「やっているところを見る」「アドバイスをする」というのが当たり前になっています。なぜなら「人に教えることが自分の評価、成長点数につながる」からです。しかも、教えることで部下が成長し、粗利益が増えるという成果が出れば、賞与に反映されます。

今では自発的に勉強会を実施するようになりました。より良いやり方を共有し、従業員みんなが成長する環境になってきたと心から実感しています。

<勤務態度の変化>

カネコ様_食事会の様子
和気あいあいとした食事会も開催しています

当社は体育会系の会社ではありませんが、技術がものをいう工場では、どうしても高圧的な態度をとってしまう従業員を見かけることがあります。しかし、成長シートでは「勤務態度」で、そうしたコミュニケーションの仕方はマイナスの評価となってしまいます。しかも、教えるという文化が根付いてきたことでギスギス感がなくなり、工場全体に和気あいあいとした雰囲気が漂うようになりました。

――金子社長ご自身の定性的効果があれば教えてください。

以前は何をどう指導すべきかが分からず「とにかく頑張れ」でした。今は自分が思う「重要業務」「知識・技術」を落とし込んだ成長シートというツールがあるため、かなり気持ちが楽になりました。思考の整理に役立ちましたし、すべてが可視化されていますから何を教えたらいいのか明確になりました。

6.従業員と企業の成長を考える経営者にはぜひ成長塾を受講してほしい

――人事制度に悩んでいる中小企業に向けて、アドバイスがあればお願いします。

企業の規模に関係なく、従業員の成長なくして企業の成長はないと考えています。大企業・中堅企業であれば人事部門主導で体系化された人事制度のもと、従業員の成長を期待できるでしょう。しかし、日本の全企業数のなかで99.7%(総務省と経済産業省による平成28年経済センサス-活動調査より)を占める中小企業の大半は、人事部門が設置されていません。つまり、社長の頭の中の人事制度だけでは、従業員の成長を期待するのは難しいと言えます。

そんな中小企業の皆様には、成長塾の人事制度をお勧めします。経営者の頭の中を可視化するだけですから、敷居は高くありません。中小企業にこそ導入してほしい人事制度だと思います。

――最後に一言お願いします。

コロナ禍で恵まれた部分はありましたが、松本先生と成長塾の人事制度に出会えていなければ、たくさん受注しても数をこなすことは難しかったと思っています。良いタイミングで出会うことができ、本当に感謝しています。「従業員が成長する仕組みづくり」に奔走されている松本先生の想いに応えるため、当社もその想いを形にできるように努力してまいります。今後ともご指導・ご鞭撻のほどお願い申し上げます。

カネコ 金子社長

株式会社カネコ様、お忙しい中、貴重なお話をありがとうございました。

※株式会社カネコ様のホームページ
※取材2022年9月


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